プーチンが習近平に激怒。二次的制裁を恐れ対ロシア輸出を絞る中国の狡猾

 

欧米の立場

ウクライナを支援する欧米ですが、大きく二つの陣営にわかれています。すなわち、「プーチンロシアを打倒せよ派!」と「停戦交渉派」です。

「プーチンロシアを打倒せよ派!」は、アメリカ、イギリス、ポーランド、バルト三国などです。アメリカ、イギリスは現在、ウクライナ戦争が原因のインフレで苦しんでいます。しかし、「ウクライナが勝つまで支援する」という立場は揺らがないでしょう。イギリスのボリス・ジョンソン首相はまもなく引退しますが、新首相が誰になっても変わらないはずです。

ポーランドとバルト三国は、なぜ強硬なのでしょうか?「ロシアがウクライナに勝てば、次はポーランド、バルト三国に攻めてくる」と恐れているからです。そして、その恐れは正当なものでしょう。

「停戦交渉派」は、ドイツ、フランス、イタリアです。彼らは、「ウクライナが領土の一部をロシアに譲ってもいいから、早く停戦してほしい」と願っています。理由は、エネルギー(特に天然ガス)のロシア依存度が高いからです。2020年時点で、ドイツは58%、イタリアは40%、フランスは20%でした。

ユーロ圏のインフレ率は7月、前年同月比で8.9%でした。それでも、バルト三国やポーランドのように、「ウクライナが負ければ次は俺たちだ」という危機感があれば、ロシアに対して強気を維持できるでしょう。

しかし、ドイツ、フランス、イタリアは、「ウクライナが負けても、ポーランドがある。ポーランドはNATO加盟国。ロシアでも、NATOを敵に回すようなことはしないだろう」と考えている。それで、ドイツ、フランス、イタリアは、ロシアに融和的なのです。

中国、インドは?

中国とインドは、しばしば「ロシアの味方」と報じられますが、「中立」といえるでしょう。

中国のロシア産原油輸入は5月、前年比で55%も増加しています。インドは、もっとすごいです。インド商工省によるとロシアからの原油輸入は2021年の日量9万バレル(輸入の2%)から、2022年4月には日量39万バレル(同8%)に増加しました。こちらは、4.3倍増です。

なぜ、中印はロシア産原油を買うかというと、安いからです。

平時であれば、中国の原油の輸入価格はロシア産もサウジ産も大きな差はない。だがロシアのウクライナ侵攻が始まって以降、両者の価格差は月を追うごとに拡大している。具体的には、中国が6月に輸入したロシア産原油の平均価格は1バレルあたり94.6ドル(約1万2,946円)と、サウジ産の同116.6ドル(約1万5,957円)より18.8%も安かった。
(東洋経済オンライン2022年8月9日)

一方、中国は、対ロシア輸出を減らしています。ロイター7月13日を見てみましょう。

中国の6月の対ロシア輸出は4カ月連続で減少した。ロシアからの輸入は高い伸びを維持した。中国税関総署が13日発表した統計を基にロイターが算出した。

6月の中国の対ロ輸出(ドル建て)は前年同月比17%減。5月は8.6%減だった。6月のロシアからの輸入は56%増。5月も80%増加していた。

輸入が高い伸びなのは、原油、天然ガスの輸入が増えているから。では、対ロ輸出は、なぜ減っているのでしょうか?

国際的な対ロシア制裁が響き、低い伸びにとどまった。
(同前)

そうなのです。中国は、欧米からの「二次的制裁」を恐れ、ロシアへの輸出を減らしているのです。要するに中国は、ロシア産原油は安いから買う。でも、二次的制裁のリスクがある製品は、ロシアに輸出しない、というのが基本的な立場です。中国は、ロシアを助けているのではなく、中国自身を助けているのでしょう。

元モスクワ国際関係大学教授ソロヴェイ氏によると、「プーチンは、習近平が助けてくれないので激怒している」そうです。

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