ドゥーギンの娘が暗殺された
再び、ロシア国営スプートニクを引用してみましょう。
モスクワ州オジンツォボ地区でトヨタのランドクルーザーが爆破された。この車は極右思想家、アレクサンドル・ドゥーギン氏のもので、犯行に関わった人物らは、ドゥーギン氏の暗殺を目論んでいたと見られている。ただし、車にドゥーギン氏は乗車しておらず、娘のダリヤ・プラトーノワ(旧姓ドゥーギナ)さんが亡くなった。ロシアメディアが報じた。
8月20日、何者かが、ドゥーギンの車に爆弾を仕掛けた。ところが、ドゥーギンはその車に乗らず、娘のダリヤさんが乗った。それで、ドゥーギン本人は死なず、娘のダリヤさんが亡くなった。
ロシアメディアは、「ウクライナがやった!」と決め打ちしています。一方、ウクライナ側は、犯行を否定しています。朝日新聞デジタル8月22日。
思想家アレクサンドル・ドゥーギン氏(60)の娘で、ジャーナリストのダリヤさん(29)がモスクワ郊外で車の爆発によって死亡した事件について、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は21日、「ウクライナは当然、この爆発とは関係がない」と関与を否定した。ウクライナのテレビ番組での発言を、国営通信社「ウクルインフォルム」が伝えた。ポドリャク氏は「私たちは犯罪国家であるロシアとは違う。ましてやテロ国家でもない」と強調。
では、ウクライナ側はどう見ているのでしょうか?
事件の背景として、ロシア国民の不安をかき立て、正式な兵の動員を始めやすくするためにロシア側が起こしたとする見立てを紹介した。また、ロシア国内での政治的グループの対立が関係している可能性にも言及したという。
(同上)
「動員を始めやすくする」というのは、何でしょうか?
ウクライナの戦場でロシアの兵士が不足している。それで、一般人を動員したいが、反発が強そうだ。そこで、ロシア政権が「ドゥーギン暗殺を画策した」と。ウクライナへの憎しみを煽って、動員しやすい環境をつくるために。
本当なのかわかりませんし、それほど説得力があるとは思えません。私たちが真相を知ることは、おそらくないでしょう。ロシア国内では、「ウクライナがやった」ことになり、「報復せよ!」という声が大きくなるに違いありません。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年8月22日号より一部抜粋)
image by: LCV / Shutterstock.com