「一帯一路は失敗」の大嘘。ユーラシア軽視で貧困国家化する日本

 

イランとロシア、それから露イランと親しいカタールは世界の3大ガス産出国だ。3か国で世界の天然ガス埋蔵量の6割を占める。3か国は、ガス供給のカルテルを作って米国側へのガス輸出価格をつり上げたい。これまでは消費者である米国側の覇権が強くて不可能だった露イラン結束によるガス価格つり上げ策が、ウクライナ戦争による転換でやれるようになった。この手の転換・非米側台頭があちこちで起きている。

Are Iran And Russia Moving To Create A Global Natural Gas Cartel?

米国は、ペロシ下院議長が訪台するなど、中国との敵対関係を強めている。米国が中国敵視を強めるほど、中国共産党の上層部では、ロシアやイランと組んでユーラシアを非米化して米国覇権に対抗しようとする習近平の力が強まり、米国と協調しようとする胡錦涛までのリベラル系勢力が弱まる。ペロシ訪台など米国の中国敵視策は、中国を非米化し、中露結束を強化し、プーチンを助けてしまっている。ペロシ訪台も、隠れ多極化策である。

中国に非米化を加速させ米覇権衰退を早めたペロシ訪台
Real Taiwan crisis is only starting – WaPo

ユーラシアは不可逆的に中露のものになっている。ユーラシア大陸を外側から支配してきた米国(米英)が退潮し、大陸を内側から支配する中露が台頭している。これは、地政学の逆転である。地政学は英国が作った学問の体裁をとった戦略であり、英米がユーラシアを外側から包囲・支配することで全世界の覇権を持ち続けられるという話だ。

世界資本家とコラボする習近平の中国

地政学は、ユーラシアにおける英米の優勢を前提としている。今のように、大陸の外側の英米よりも内側の中露が優勢になった場合に世界の覇権や米英がどうなるかという展開は歴史上初めての経験だ。19世紀末に資本家(多極主義者)がシベリア鉄道を開通し、ロシアがユーラシア内側の統一された初の勢力になって以来、内側と外側が対立する事態になったが、これまでは常に外側が強かった。中国はなかなか台頭しなかったし、中露(中ソ)の結束も強まらなかった。だが2000年以来の四半世紀で状況が大転換し、今や内側の中露が結束し、非米諸国を率いて世界の資源類の利権を握って強くなり、外側の米国側は衰退の一途だ。中国は米覇権を潰したい習近平が独裁する強大な国になり、欧米はどんどんショボくなっている。この逆転は今後ずっと続く。地政学の理論は加筆が必要だが、地政学を語る(騙る)権威筋は米国側のプロパガンダの傀儡であり、地政学の逆転自体が「起きてない」ことになっている。笑える。

Something is Looming Geopolitically, and We Better Start Taking It Seriously

日本のマスコミでは、一帯一路が失敗したことになっているし、ユーラシアの非米化もプーチンの奇抜な失策とみなされている。日本のマスコミ権威筋やその傘下にあるネット言論は、この分野でも他の分野でも、敵性勢力の失敗を妄想して嘲笑するだけの幼稚な思考に終始している。日本の今後の経済発展を考えるなら、日本もユーラシアの開発に参加する必要がある。だが、それにはユーラシアを席巻する中露と和解し、米国からの非難や妨害を乗り越えて動き続けねばならない。中露との和解は可能だが、米国からの非難妨害を乗り越えるのは、現実無視の対米従属屋しかいないマスコミ権威筋(とその傀儡市民)を抱える今の日本にとって難しい。日本は、ユーラシアに手を出せない。「ユーラシア開発はどうせ失敗するのだから不参加で良い」という幼稚な妄想を軽信し続け、貧しくなっていく運命にある。

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