「一帯一路は失敗」の大嘘。ユーラシア軽視で貧困国家化する日本

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アメリカを始めとする西側諸国を敵に回し、苦しい立場に置かれているとされるロシアと中国。しかしユーラシアでは中露による工作が奏功し、地域の非米化が達成されつつあるようです。今回の無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』では著者で国際情勢解説者の田中宇(たなか さかい)さんが、そんなユーラシアの現状を詳しく紹介するとともに、今後この地でアメリカの影響力が拡大することがない理由を解説。さらに在日韓米軍撤退のシナリオについても考察しています。

ユーラシアの逆転と日韓米軍の撤退

※ この記事は「中露主導の朝鮮半島和平への道筋をつけるロシア」(田中宇プラス)の続きです

ロシアは今年2月のウクライナ開戦後、中国やインド、イラン、トルコなど非米諸国を誘い、ユーラシア大陸の非米化を進めている。ロシアはまず、欧州に売れなくなった石油ガスなどの資源類を非米諸国に安く売ることで、非米諸国が米国主導の対露制裁に乗らないようにした。開戦後、資源類の国際価格が上がったので、安く売ってもロシアは前より儲かっている。非米諸国間の資源類の貿易決済には、米国側のSWIFTでなく、ロシアや中国が開発してきたSWIFT代替の非米諸国通貨建ての決済システムを使い(露SPFS、中CIPS)、中国も非米諸国との貿易に非米決済システムを使う傾向を強めている。中国は習近平が政権についた2014年から、ユーラシアの経済覇権戦略として一帯一路を進めてきた。これまで一帯一路は停滞していた部分もあるが、ウクライナ戦争でロシアが中国も誘って非米化に積極的になったことで一帯一路も加速されている。

資源の非米側が金融の米国側に勝つ

米国の監視下にあるSWIFTやドル建て決済を使った貿易など経済行為はすべて米国側に知られてしまうが、非米決済システムを使った貿易・経済行為は米国側に知られずに進められる。米国側は、露中主導のユーラシアの非米化の状況を把握できなくなっている。米国側のマスコミは中露敵視のプロパガンダ機関なので、中露の非米化策を悪しざまに失策として描きたがることもあり、非米化や多極化は米国側の人々が気づかないうちに隠然と進んでいく。国連では、加盟国の3分の1しか対露制裁を支持しなくなった。

Escobar: Geopolitical Tectonic Plates Shifting, Six Months On
Only one in three UN members back new anti-Russia resolution

もし今後、一帯一路など中露によるユーラシアの非米化策が大幅に停滞して決定的に失敗したとしても、それによってユーラシアの経済覇権が米国側に戻ることはない。米国側は1997-8年のアジア通貨危機後の四半世紀にわたり、中東以外のユーラシアの多くの地域で経済覇権をほとんど放棄してきた。冷戦終結後しばらくは、米国側(欧米)がユーラシア内陸部を発展させる構想(日本も90年代前半に環日本海経済圏構想など)があり、米国側がユーラシアの経済覇権を握ろうとしていたが、それらの動きはアジア通貨危機後に下火になった(環日本海は、日本が米国に言われて進めた構想だったことになる)。

ユーラシアの非米化
American Hegemony and the Politics of Provocation

アジア通貨危機から3年後の2001年には911テロ事件が起こり、米国は、アルカイダなどイスラム主義のテロリストをこっそり育ててユーラシア各地でテロをやらせ、それを口実で米軍がアフガニスタンやイラクなどを占領する自作自演の「テロ戦争」の軍事覇権戦略をやり出した。米国側の覇権戦略は軍事面が席巻し、経済面はないがしろにされた。米国側はそれ以来ずっと、ユーラシア内陸部の経済発展にほとんど貢献していない。米国側は、テロリストを育ててユーラシアの安定と発展を壊すだけの勢力になった。

アルカイダは諜報機関の作りもの
多極化の申し子プーチン

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