「一帯一路は失敗」の大嘘。ユーラシア軽視で貧困国家化する日本

 

米国に代わってユーラシアの安定と発展を手がけるようになったのは中露だった。911事件の前年の2000年初にロシアの政権を握ったプーチンは、中国との国境紛争をすべて解決して中国との結束を強化した。中露は、両国の間にある中央アジア5か国も入れて、ユーラシアの安定と発展を推進する「上海協力機構」を作った。上海機構は、テロリストを育ててユーラシアを不安定化しようとする米国に対する防御策であると同時に、ユーラシアを安定・発展させるための中露協働の覇権組織でもあった。911後、米国はアフガニスタンを占領し、中央アジアや新疆ウイグルにテロ行為を輸出しようとしたが、上海機構がテロ拡大を食い止めた(中国共産党がウイグル人のイスラム主義者たちを収容所に入れたのは、中国にテロを輸出しようとした米国の国際犯罪への対策ということになる)。

プーチンの新世界秩序
立ち上がる上海協力機構

上海機構はその後、印度パキスタンやイラン(今年)が加盟国になり、トルコやサウジアラビア、アルメニア、アフガニスタン、ベラルーシなどのユーラシア諸国が準加盟(オブザーバー、対話伴侶、申請中含む)になっており、ユーラシアを代表する国際安全保障機関に成長した。上海機構は、ユーラシアの非米側を代表する国際機関でもある。サウジやトルコ、印パなど、米国とつながっている諸国も参加しているが、それらの国々は非米的な色彩も持っており、上海機構への参加は非米側との協調を強化する策として行われている。近年、中東での米国覇権低下に合わせて非米的な色彩を強めているイスラエルも上海機構への加盟を希望している。

非米化で再調整が続く中東
多極側に寝返るサウジやインド

米国側はユーラシアで上海機構に対峙する国際組織を持っておらず、米国とユーラシア各国との2国間関係だけが頼りだが、昨夏の米軍アフガニスタン撤退に象徴されるように、米国の影響力は低下し続けている。今後たとえ中露がユーラシアの運営に失敗したとしても、その空白を埋める形で米国側の影響力がユーラシアで拡大することはない。そもそも中露は、冷戦後の米国が1990年代末にユーラシア進出を放棄した後の空白を埋めただけだ。米国はその後ずっとユーラシアに戻ろうとしていない。アフガニスタン占領も、米国に目的意識が感じられず、中露に脅威を感じさせて結束させてユーラシア覇権を取らせるための隠れ多極主義の策でしかなかった。

多極化の進展と中国
米露逆転のアフガニスタン

ユーラシアの覇権は、すでに不可逆的に中露が持っている。中央アジアの石油ガス利権の多くは中国のものになった。昨年の米軍アフガン撤退と、今年からのウクライナ戦争は、中露のユーラシア覇権を強化する働きをしている。バイデンの米国は選挙前のインフレ対策(石油ガス相場引き下げ策)として、石油ガス産出国であるイランと核協定を結び直そうとしているが、イランはウクライナ開戦後、ロシアがユーラシアの貿易システムの非米化を進めてくれたおかげで、米国側からの経済制裁に関係なく、中露などユーラシアの非米諸国と貿易を拡大できるようになった。イランにとって米国との核協定の結び直しの重要性が下がった時に、米国がイランと核協定を結び直したがっている。米国の愚策(隠れ多極化策)が、イランを優勢にしている。イランは、核協定がどうなるかに関係なく、ユーラシアの非米化に貢献していく。

イラン核協定で多極化
インドへのパイプラインでアフガンを安定化するプーチン

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