川を泳いで敗走か。ウクライナの反撃に重火器を破棄して退却するロシア軍

 

それと、AGM-88対レーダーミサイルでロ軍の防空レーダーが破壊されて、ロ軍のS300は機能しなくなっている。このため、バイラクタルTB2が偵察活動や対砲兵戦で、ロ軍の火砲を攻撃できるようになってきた。TB2でT-72戦車を破壊する動画も出てきた。

特にドニエプル川左岸のヘルソン市などの西側の一帯では、ウ軍が制空権を確保した可能性があり、この地域でロ軍戦闘機の活動は、非常に少なくなってきた。

このため、ウ軍攻撃機もロ軍地上部隊を空爆できるので、ウ軍陸上部隊は、砲兵と空軍の支援を受けて、ロ軍を攻撃している。これで、ヘルソン市郊外までウ軍は到達した模様である。

それでも、ロ軍の待ち伏せ攻撃で、ウ軍戦車隊などが被害を受けているようであり、相当な犠牲を払って前進している。

しかし、全体的には、ロ軍が不利な戦いになり、戦意の低い部隊は、ウ軍の攻撃ですぐに逃亡している。前線にいたドネツク109連隊は、ウ軍が攻撃開始したら、即撤退した。しかし、これも待ち伏せ攻撃の誘導の可能性もあり、注意が必要である。

英国と米国のウ軍軍事顧問団も、ウ軍の総反撃の前進速度を早めると、損害が多くなり、継戦能力を低くすることに警戒している。数か月という侵攻速度にして、ロ軍の弾薬を枯渇させるべきであるという。それと、ポーランドの全戦車PT-91も、まだ届いていない状況であり、攻撃兵器も十分とは言えないことも考慮しているようだ。

現在、オランダから供与された兵員輸送装甲車YPR-765APCsが多く、T-72、T-64などの戦車の台数が少ないことがネックである。この戦車の多くをヘルソン市奪還作戦に投入しているが、それでも損害が多いと数が足りなくなる。

このため、ウクライナのアレストビッチ大統領顧問によると、政府は多くのウ軍兵士が命を落とすことを望んでいないとし、ウ軍がロ軍に対し素早く勝利することを期待しないで欲しいとした。

しかし、ウクライナのレズニコフ国防相は、冬まで戦争を続けると、援助疲れで、EUからの支援がなくなることを心配している。このバランスが必要になっているようだ。

これに対して、ドイツのショルツ首相は、冬の燃料について、確保できたと言っているが、多くの国では冬の燃料の不足が心配な状況である。

プーチン大統領は、欧州への天然ガス供給を止めて、欧州でのエネルギー不足から停戦をウクライナに要求するのを待つ方向である。このため、ノルドストリームを止めた。

しかし、南部ヘルソン州のウ軍総反撃の経過で自信を持ったゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部の紛争解決のための交渉グループにおける同国の代表団を廃止し、戦争で決着させるという。

このため、ゼレンスキー大統領は、ドイツに対して、ウクライナから電気の供給を行うとして、欧州のエネルギー不足を緩和して、支援の継続を図りたいようである。

そして、このウ軍の総反撃で、占領地のロ連邦編入のための住民投票は、統一地方選と同日の9/11に実施するのは不可能で、次の候補は11/4の「国民団結の日」になるのではないかと言われている。

一方、ザポリージャ原発には、IAEAの査察団が到着した。これで、ロシアは自分が占拠する原発への攻撃を控えると、期待したい。

この矛盾した根拠が出てきた。IAEAが「なぜ原発に飛んできたミサイルはロシアが打ったような方向を向いているの?」と言う質問に対して、ロシア側の担当者は、「着弾する際にミサイルが180度方向転換するからだ」と真顔で答えたという。

このようなロ軍の行動監視に、IAEAのグロッシ事務局長は、ザポリージャ原発にスタッフ2人を常駐させると発表した。

そして、ロシア軍が占拠するザポリージャ原子力発電所の安全性に関する報告書を9月9日までに発表すると述べた。

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