川を泳いで敗走か。ウクライナの反撃に重火器を破棄して退却するロシア軍

 

クリミア半島に補給している兵器・弾薬は、ヘルソン州に送れずにザポリージャ州のトクマク付近に蓄積したが、ここもHIMARSで破壊されている。しかし、ロ軍はドニエプル川西岸への大量の補給・援軍を諦めて、ザポリジャー州で新たな攻撃をするのではないかと見られている。新しく編成されたロ軍の第3軍団もザポリージャ州に正規部隊を送り込んで、募集兵はハリキウ近郊やイジュームに送っている。

このことでは、ドイツ軍ツォルン総監が、ロシア陸軍には第二戦線を開く余地があるとし、西側諸国はロシアの軍事力を過小評価すべきでないと警鐘を鳴らしている。まだ、ロシア軍は豊富な兵器を持っているということだ。

ウ軍の主力部隊がいる南部ヘルソン州では、29日より総攻撃になり、3方向で反撃している。1つにはヘルソン市の北からロ軍に占領されたブラホダトネを奪還し、高速道路M14を一直線でキセリフカ、そしてヘリソン市郊外のチェルノバイフカまで攻撃が及んでいるようである。

この攻撃軸にウ軍はかなりの戦力を投入している。HIMARSも昼からチェルノバイフカへの攻撃に使用している。しかし、チェルノバイフカから先のヘルソン市方面は要塞地帯になり、ここからの攻撃は容易ではないし、配備のロ軍も多い。しかし、ウ軍の攻撃がすごいことにロ軍は、ビックリしたようである。

この攻撃と同期して、ヘルソン市内の特殊部隊も市内で銃撃戦を開始しているが、市内の銃撃戦は収まったようである。

ヘルソン州中北部のロゾベの橋頭保からロ軍を攻撃して、スクイー・スタボクを奪還し、コストロムカも奪還でT2207号線で両軍が激戦中である。ロ軍の戦車中心BTGが集中しているので、ここではウ軍の前進速度は遅いことになっているが着実に前進している。

ヘルソン州北東部では、アルハンヘルスク、オリヘネを奪還して、ビソコピリアで激戦になっている。しかし、ここのウ軍は攻撃し奪還した地点を再度、ロ軍に奪われるなど、苦戦もしているようだ。しかし、ロ軍がヘルソン州東中部のゾルイ・バクカに砲撃をしているということは、ウ軍が10kmも南下した可能性がある。

しかし、このヘルソン州全体でウ軍もロ軍も情報統制しているのでよくわからない。両軍の攻撃地点やSNSの情報等で推測するしかない。

そして、混戦模様でもある。広い範囲に1万8,000千のロ軍では、点しか守れていないので、ウ軍が進撃しても、ロ軍陣地を避ければ、前進できる可能性が高い。

どちらにしても、ドニエプル川西岸地域のロ軍30BTGの1万8,000名分の補給ができなくなっているが、それでも、ロ軍は、今までに貯め込んだ大砲や戦車、ヘリコプター、迫撃砲と弾薬を大量に持ち戦っている。ウ軍兵士は「奴らの装備は豊富だが兵士は少ない」という。

補給は、ウ軍戦闘機に見つからないように、クリミアから輸送ヘリ2機と護衛の攻撃ヘリ2機の4機編隊で細々としているようであるが、非常に少ない。補給線を維持できずに空からの補給になっている。それと、孤立したロ軍が多数存在しているようだ。

このため、長期の戦闘になると、ロ軍の大量投降になる可能性が出てきた。いつまで、ロ軍が持つかという問題になっている。

事実、ロシアの独立系メディアThe Insiderによるとロシアはすでに誘導ミサイルをほとんど保有せず、戦争がこのまま維持されれば、砲弾と装甲車両は2022年末までにほとんどが払底するという。

そして、戦車ですが、ロ軍の車両損失合計は5,415両だが、1,756両(31%)がロ軍放棄でウ軍が鹵獲したものだ。これを修理して戦線に送り出しているようだ。ロ軍戦車のメンテナンスがないことで故障率が高いことになっている。

最後に、敗走するロ軍は、フェリー乗り場に押し寄せることになるが、ドニエプル川西岸地域では3ケ所のフェリーや橋しかない。後は川を泳いで渡るしかない。重火器は放棄することになる。

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