この本で興味深いのは、世界のエネルギー事情についての分析でしょう。
まず、グリーンエネルギーへの傾斜によって、石油開発への投資が減少し、エネルギー供給力が減少しました。さらに新型コロナ対策で、金融緩和が行われ大量のマネーが供給されたのです。これらはすべて資源・エネルギーの価格を押し上げることになりました。
エネルギー価格の上昇によってオイル・ガスマネーを手に入れたプーチン氏が、アメリカの軍事介入はないと判断し、「帝政ロシアの復活」という長年の目標達成のためにウクライナ侵攻を決断した、というのが著者の見立てです。
生前の安倍元首相はロシアとの緊張を緩和し、「インド太平洋構想」でインドを取り込み、中国包囲網を構築しようとしていました。EUとロシアのウクライナでの対立により、ロシアとの緊張緩和は崩壊しましたが、安倍元首相としてはEUとロシアの対立は残念なことだったのでしょう。
著者は自称文化人や左翼メディアが「反安倍」を煽ってきた結果、山上という暗殺者を生み出したことは、世界の外交にとって大きな損失であり、日本の未来を奪ったとまで表現しています。
朝日新聞、毎日新聞は安倍氏がスベっても転んでも攻撃を続けた…もはや病気である(p57)
石油取引の現場にいただけあって、正確な日本のエネルギー関係の知識、現状認識に驚愕しました。
日本の再生可能エネルギーについても、期待通りには絶対に動かない「ポンコツ」と断罪しています。そのポンコツを高額で買い取る「再生可能エネルギー買取制度:FIT法」によって、高額の賦課金がプラスされ日本の電気料金は上昇し続けているのです。
戦時経済となった今、資源、エネルギーの安定確保のためにも、再生可能エネルギーの高額での買い取りの見直しと提言しています。今、投資すべきなのは不安定な再エネではなく安定した石油・ガス・石炭などのエネルギーなのです。
マスコミが報じない現場に近い情報だと感じました。★5とします。猫組長さん、良い本をありがとうございました。
【私の評価】★★★★★(91点)
<私の評価:人生変える度>
★★★★★(ひざまずいて読むべし)
★★★★☆(素晴らしい本です)
★★★☆☆(読むべき一冊です)
★★☆☆☆(余裕があればぜひ)
★☆☆☆☆(人によっては)
☆☆☆☆☆(こういう本は掲載しません)
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