検察ではなく監査院が前職大統領を調査すること自体が異例であるだけに、適切性に対する疑問も提起されている。龍仁大学のチェ・チャンリョル教授は「ムン元大統領が気分を悪くする理由はない」としながらも「検察がこのような事案を調査中だが、監査院が検察より一歩先に進むことが適切なのか疑問」と指摘する。一方、ある与党議員は「文在寅政権と違って無理に検察・警察を動員しないという意味」と反論した。つまり検察がでしゃばるとまた民主党が、やれ検察政権だとか検察権力の乱用だとかぬかすから、検察ではなく監査院が前面に出てやっているということなのだろうか。
大統領室の高官は電話インタビューで、「監査院は独立した憲法機関で、大統領の指揮を受ける機関ではない」とし、関連の立場を表明する計画はないと明らかにした。監査院自らの判断という点を強調したもので、「政治報復」として強く反発する野党を刺激しない意図とも解釈される。
「卑俗語論難(尹大統領が訪米過程でなにか品位のないことばを言ったとか言ってないという議論)」で国政支持率最低値を記録した「国民の力」は局面を打開できる好材料と見ている。
クォン・ソンドン、キム・ギヒョン議員など「尹心」(ユン大統領の意中)を代弁している人々は、先を争ってムン元大統領の調査拒否を攻撃した。イ・ジェミョン代表の司法リスク対応に総力を傾けている民主党を、イ・ジェミョンとムン・ジェインとに分断する効果も狙えるという分析だ。
民主党は、与党が卑俗語論議を覆い隠すために、ムン元大統領の書面調査を進めると同時にイ・ジェミョン代表を狙って城南FC捜査を進めていると解釈している。民主党の関係者は「野党を泥沼にするという意図」と非難している。
しかし客観的にみて、こうした民主党の主張はピントが完全にずれている。検察および監査院は、文在寅氏が大統領時代にやった多くの不正を法に基づいて糺そうとしているだけである。それを「政治報復」だのなんだのとナンクセをつける民主党こそ、代表に上り詰めたイ・ジェミョンが現在司法リスクが最大値となっているのをなんとか白紙の状態に戻そうとして(イ・ジェミョンにはなんの罪もないと)、ありとあらゆる難癖を作り出して尹大統領および与党「国民の力」に非難を浴びせている格好なのだ。大統領および与党は、静かに落ち着いてやるべきことだけをきちんと、淡々と(粛々と)やっていくだけでいい。
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