「習近平の3期目」ばかりに注目。稚拙な日本メディアが伝えぬ焦点

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10月16日から始まる5年に一度の党大会(中国共産党第20回全国代表大会)。日本メディアの関心は、もっぱら「習近平の異例の3期目」であり、支える幹部の人事となっていますが、その論点の浅はかさを指摘するのは、多くの中国関連書籍を執筆している拓殖大学教授の富坂聰さんです。今回のメルマガ『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』では、党大会に参加する2千人を超える代表たちの顔ぶれが大きく変わっていること。なかでも改革開放後の世代が多く、専門技術を持つ党員が数多くいることなど、本当の注目点を伝えています。

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共産党大会が近づくなか唐突に出された出世マニュアル

国慶節の連休がいよいよ始まった。中国が進めた「動的ゼロコロナ」によって中国経済は大きく落ち込んだ。その浮揚策の入り口として中国政府は旅行や消費を大いに盛り上げたいはずだが、少なくとも北京にはそうした空気とは無縁のようだ。

国慶節の休みは早ければ9月23日くらいに始まるはずだが、北京を拠点とした高速鉄道はどれも驚くほどガラガラだったという。数人の友人がその社内の様子を写真に撮って送ってくれた。そんなことになっている理由は簡単だ。16日から始まる20大(中国共産党第20回全国代表大会)の対策のためだ。

5年に一度の党大会が開かれる今年が「政治の季節」になるのは仕方のないことだ。しかしそれを扱うメディアの報道が、「習近平の異例の3期目」をめぐる話題や人事の予測ばかりになることには、首を傾げたくなる。「もう1週間も経てばすべて分かるのに、何を焦っているのか?」人事予測を書くために北京を走り回っていたころ、北京の複数の友人から同じ疑問を投げつけられ、思わずため息をついたことを思い出す。

確かに人事が少し早く分かったからといってはしゃぐ意味はない。そもそも15年前、習近平がなぜ胡錦涛の「接班(後継者)」になることができたのか。その疑問さえ日本ではまだしっかりと解けてはいないのだ。

現状、うっすらと伝わってきている党大会関連の情報によれば、今回、中国共産党中央指導部は「安定」を重視した人事を行うらしいということだ。それはウクライナ問題をめぐる予測の難しい世界の動きと、悪化の一途をたどる対米関係をにらんだ対策としての「安定」を求めてのことだ。

ただ、それは大きく人事を変えないことによって得られる安定なのか。若くてもプロフェッショナルを当てることで得られる安定なのかは定かではない。

習近平が自ら敷いたレールが後に大きく変更されないためにも、今年、未来の指導部の姿を少しは見せておく必要もあり、ある程度の新人の登用も不可欠だと考えられるのだ。つまり安定を確保しながら、どのように新鮮な空気をそこに入れ込んでいくのか。党指導部の腕の見せ所だろう。

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