「習近平の3期目」ばかりに注目。稚拙な日本メディアが伝えぬ焦点

 

一方、習近平と李克強だけを追いかけていても中国共産党の全体は見えてこない。そうした意味から、すこし代表選出の過程から党全体の変化をとらえてみたい。

まず、指摘される最も大きな変化は「今回の党大会で初めて参加する代表の大多数が改革開放政策以後に入党した党員」(組織部幹部)になったという特徴だ。

20大に参加する全2296人の代表の平均年齢は52・2歳。これは日本の国会議員の平均年齢(『国会議員要覧 令和3年2月版』によれば、男性国会議員の平均年齢が59・6歳で女性は55・4歳)と比べても少し若い程度だ。

しかし改革開放が主な記憶になった党員が代表の多くを占めるようになるという変化が党に与えるインパクトは決して小さくない。外国とのギャップを埋めるという意味でも、画期となる大会となるかもしれない。

というのも中国には「上に政策あれば、下に対策あり」という言葉あり、中央集権はおもったほど機能していない。かつて胡錦涛は党中央の政策を正しく地方に伝えることの難しさを、「政策は中南海を出ない」と表現して嘆いたことがある。

このことは逆に考えれば、現場がいかに中国を特徴づける力を持っているかを表している。つまり、改革開放が主な体験となった世代が現場を動かす時代が、これまでの中国と同じではないということだ。

もう一つ、今回の大会に選ばれた代表の特徴から見えてくるのは、仕事の第一線で活躍した人材や専門性の高い技術を備えた党員の登用である。多くの共産党系メディアが代表の内訳を報じたなか、なぜか一律に強調しているのがその点なのだ。

例えば上海の東方衛星テレビは「生産の第一線の幹部は771名で全体の33・6%を占めている」と伝えている。なかでも「専門性の高い技術を持っている党員は、266名もいて、その割合は11・6%にも達している」と誇らしげに紹介している。

中国中央テレビ(CCTV)の番組ではさらに細かくその内訳に触れていて、生産の第一線から選ばれた代表のなかには、これまで省(軍)クラス以上の栄誉称号を獲得した者が710名も含まれているという。中国初のチップ「龍芯シリーズ」の開発者である胡偉武もその代表の一人だ。これが新しい党代表の持つ一つの傾向なのだ──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年10月2日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by:humphery/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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