焦る日本と冷静な金正恩。北朝鮮のミサイル発射が「今しかない」訳

2022.10.05
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金正恩は日米韓、そして中国を見ている

加えて、東アジア情勢をめぐる関係国の動きをよく見ていることも背景にある。だからこそ、「今しかない」のだ。

〇日本

岸田政権が旧統一教会問題と安倍元首相国葬問題で窮地に立ち、この先、どうなるかわからない状態。旧統一教会問題では国民の政治不信が拡がり、国葬問題では国民世論の分断を招いた。岸田首相は、3日に召集された臨時国会では野党と世論の批判を一身に受け、政権運営が行き詰まる可能性もある。

〇アメリカ

バイデン大統領率いる民主党が11月の中間選挙で上下両院とも共和党に敗北する可能性が濃厚。そうなれば求心力を失い、年齢とも相まって2024年大統領選挙での再選は遠のく。バイデン政権は、北朝鮮の揺さぶりに振り向きもしないが、求心力が低下したり再選されなければ風向きが変わる可能性もある。

〇韓国

発足して5か月の尹錫悦大統領は早くも支持率が20%台まで下落。議会は野党が過半数を握りねじれ状態。南北首脳会談に応じた文在寅前政権とは異なり、北朝鮮に対しては厳しい「北風政策」の尹政権だが、4年半余り任期を残しながらレームダック状態に陥りつつある。

〇中国

10月16日から始まる中国共産党大会で習近平総書記の3選が確実視されている。3選後は、個人崇拝の色合いをさらに強め権限が強化される可能性が高い。ゆくゆくはアメリカに並ぶ軍事力を維持することになる。中国が台湾統一の動きに出るなら、北朝鮮の協力は中国にとって不可欠になる。

こう考えれば、最初に述べたように、私が金正恩でも「今こそチャンス」と考える。

アメリカに対抗する抑止力を蓄えるには、日米韓の政治リーダーが、いずれも足元に揺らぎに苦しみ、かつてほど蜜月関係にはないにせよ中国の政治が安定している「今しかない」のである。

私たちから見れば好ましくないが、北朝鮮にとってこの秋は、またとない「実りの秋」になってしまいそうである。

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著書紹介:ゼレンスキー勇気の言葉100
清水克彦 著/ワニブックス

清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は報道デスク兼解説委員のかたわら執筆、講演活動もこなす。著書はベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『人生、降りた方がことがいっぱいある』(青春出版社)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)ほか多数。

image by : 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

清水克彦

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