焦る日本と冷静な金正恩。北朝鮮のミサイル発射が「今しかない」訳

2022.10.05
24
 

なぜハイペースで撃ち続けるのか

北朝鮮は先月25日、28日、29日に続き1日も短距離弾道ミサイル2発を発射しており、異例のペースでの軍事挑発が続いている。

私は、当日、ソウルに滞在していたが、韓国当局や現地メディアの分析では、

「これら5発のミサイル発射は、日米韓合同軍事演習やアメリカのハリス副大統領訪日や訪韓に合わせたもの」

「1日に打ったのは、韓国が『国軍の日』と呼ばれる軍の記念日で、尹錫悦大統領が『北朝鮮が核兵器使用を試みるなら、韓米同盟と韓国軍の圧倒的かつ決然とした対応に直面することになる』と警告したことに反発したもの」

といったものであった。

短期的にみれば確かにそうだが、このところ続く発射は、北朝鮮の「国防力発展5カ年計画」(2021年の朝鮮労働党大会で提示された計画)にもとづく戦略の一環なので始末が悪い。

事実、金正恩は、今年1月、「極超音速級ミサイル」の発射に成功した際、

「国防力発展5カ年計画の『中核5大課業』のうち、最も重要な戦略的意義を持つ部門で大成功を収めたミサイル研究部門の科学者ら担当者の実践的成果を高く評価する」

「国の戦略的な軍事力を質量共に、持続的に強化し、わが軍隊の現代性を向上させるための闘いにいっそう拍車をかけなければならない」

と語っている。

これまでなら、北朝鮮の挑発は、日米韓3か国の何らかの動きに反発したり、アメリカを6か国協議(日米韓+中朝ロの外交会議)の場に引きずり出したりするために、「こっちを見て!」とばかりに発射したと分析することができた。

しかし、今は緻密な計画に沿って研究開発が進んでいる。それだけに日米韓にとっては脅威になるのだ。

今後、北朝鮮は?

北朝鮮のミサイル発射は今後も続く可能性が極めて高い。2017年9月以来となる核実験も、近く、10月16日から始まる中国共産党大会が終了したあたりで行われる危険性がある。

なぜなら、金正恩が示した国防力発展5カ年計画の「中核5大課業」を成し遂げる必要性があるからだ。

問題の「中核5大課業」とは、大まかに言えば、次の5つに大別される。

  1. 超大型核弾頭の生産
  2. 1万5,000キロ射程圏内の任意の戦略的対象を正確に打撃、掃滅する核先制および報復攻撃能力の高度化
  3. 極超音速滑空飛行戦闘部の開発導入
  4. 水中及び地上固体エンジン大陸間弾道ロケットの開発
  5. 核潜水艦と水中発射核戦略武器の保有

    これらのうち、(3)は、今年の度重なる発射によってすでに達成された。(1)と(2)は、ICBM級のミサイル発射や核実験を行えば、近く到達できる。

だとすれば、北朝鮮は、これら2つの成功を急ぎ、あとは(4)と(5)に全力を傾注してくる可能性が極めて高いということになる。

北朝鮮は、先に触れたように、2018年6月の米朝首脳会談を契機に、核実験とICBM級ミサイルを発射しない猶予期間を維持してきた。しかし、国防力発展5カ年計画によって、それが反古にされる形になったと言わざるを得ない。

ロシアのウクライナ侵攻から得たもの

「核兵器を持ち、軍事力を強化してこそ、国外からの侵略から自国を守ることができるとの思いを強くしたことは間違いない」

こう語るのは、北朝鮮事情に詳しい慶應義塾大学教授、磯崎敦仁氏である。

現在のウクライナ情勢は、ロシアがウクライナ東部と南部の州4つを強制併合したものの依然として分が悪く、苦戦が続いている。

とはいえ、アメリカもNATO諸国も直接的な軍事介入をできないでいるのは、ロシアが核をちらつかせているためで、北朝鮮も小さな核弾頭をICBM級ミサイルでアメリカ東海岸へも飛ばせる技術を確固たるものにできれば、最大の抑止力になると踏んでいるのだ。

print
いま読まれてます

  • 焦る日本と冷静な金正恩。北朝鮮のミサイル発射が「今しかない」訳
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け