2年で9回。なぜアメリカは西アフリカでクーデターを頻発させるか

 

米軍は2007年に、アフリカを専門に担当するアフリカ軍(司令部)を新設した。専門部署を新設したのに、米軍が訓練後のアフリカ諸国の将校たちの動向を見ないまま放置しているはずがない。米軍はむしろ、アフリカでの軍事諜報活動や隠然介入を以前より強化しているはずだ。

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この点をさらに深く考察すると、米軍はアフリカを意図的に恒久的な混乱の中に置いておくために、軍人たちがクーデターや内戦を起こせるような軍事技術を供給し続けてきたのでないか、という疑いになる。米軍がアフリカの将校たちを訓練した場所の一つに、米国ジョージア州フォート・ベニングの訓練センターがあるが、ここは冷戦時代、中南米諸国の将校たちに軍事訓練をほどこしてきた場所でもある。訓練を受けた中南米の将校たちの中にはその後、自国で左翼政権などを倒すクーデターを起こして軍事独裁者になったり、自国内の左翼やリベラル派を拷問虐殺する政策を担当した者がたくさんいる。米国が訓練した軍人たちによって、中南米は民主主義と経済安定を潰され、人々は何十年も独裁と虐殺と貧困に苦しめられ続けている。

中南米の人々の多くは、米国が意図的に中南米を潰し続けていると思っている。この感覚は、おそらく事実に近い。米国は中南米を偶発的にでなく、意図的に潰してきた。となれば米国は、似たような策略をやっているアフリカも、意図的に潰している可能性が高い。西アフリカでクーデターが頻発して政治経済の不安定が延々と続いている一因は、米軍が西アフリカ諸国の将校たちを訓練してクーデターのやり方を教えているから、ということになる。

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中南米やアフリカを潰して恒久的な混乱と貧困の中に置いておく米国の戦略は、一つ前の覇権国である英国の戦略を踏襲したものだ。英国は19世紀前半にナポレオンを倒して覇権国になる時に、スペインが無政府状態になった混乱に乗じて中南米各地でバラバラの独立運動を支援し、中南米をたくさんの小国に分割して独立させることに成功した(ポルトガル領だったブラジルだけは英国も手を出せず、単独の大国になった)。その後、英国はフランスなど他の列強を誘導して「アフリカ分割」や「中東分割」を手がけた。英国は、これらの諸大陸を小国に分割することにより、諸大陸に大型の国ができてそれが経済発展して強国になって英国の覇権を脅かす可能性をあらかじめ阻止した。

覇権の起源・ユダヤネットワーク

英国などの列強は、アフリカを分割する際に、各地の民族が分断されるかたちで国境線(列強植民地間の境界線)を引き、いずれアフリカ諸国が独立しても、小さな国々が相互に戦争もしくは内戦を永久に抱えるように仕向け、アフリカが永久に弱くて貧しくて欧米の言いなりになるようにした。英国は、同様の手口で中国も分割しようとしたが、新興の資本家たちの国だった米国が、中国の分割を阻止した。

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英国による世界分割は、英覇権上層部の「帝国と資本の暗闘」の一部でもあった。産業革命によって成立した英国覇権(大英帝国)は、英国による世界支配を恒久化しようとする「帝国」と、産業革命(工業化)と大量消費を世界中に拡大して世界経済を発展させようとする「資本」という2つの方向性の間の協業で成り立っていた。「資本」は、大量消費してくれる安定した大きな市場を各大陸に作りたがった。大きな新興国が安価な労働力で大量生産し、その賃金で貧困層が所得を増やして中産階級になって消費が拡大し、経済大国になる。その過程で資本家が儲ける。資本の側は、中南米アフリカ中東インド中国など各大陸に経済大国が新興してくることを望み、各地の民族主義を奨励・扇動し、世界中が植民地から独立する民族自決が理想なんだと当時のマスコミ権威筋に喧伝させた。第一次大戦後の国際連盟創設時には、すべての植民地が独立する方向性が定まった。

資本の論理と帝国の論理

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