2年で9回。なぜアメリカは西アフリカでクーデターを頻発させるか

 

アフリカだけでなく、中東や中南米の諸国も、同様に、米欧に見切りをつけて中露に頼るようになり、米国から中露への覇権移転を望むようになっている。パレスチナ自治政府のアッバース議長は最近、中東和平の仲裁者として米国よりロシアの方が望ましいと公式に発言し、米政府を激怒させている。米国がパレスチナに自治政府を作らせてから30年以上経ったが、この間米国はイスラエルの言いなりになる傾向を拡大してきた(中東和平はロシアがやっても難しいが)。米国は、イラクとアフガニスタンに侵攻して合計250万人を殺したうえ混乱を放置し、シリアを内戦にして50万人を殺した。いずれの国も、米国が退いた後、ロシアやイラン、中国によって安定化がはかられている。サウジも米国側から非米側に転向した。

US ‘furious’ over Palestinian leader’s comments to Putin
‘I Know You Are But What Am I’: Russia’s Ready Response to US Africa-Alarmism

これらの全体から考えて、米国の覇権運営の失敗は意図的なものであり、米軍が西アフリカでクーデターを繰り返し誘発していることも、アフリカ諸国が米国見切りをつけて中露に頼るように誘導する隠れ多極主義の策略でないかと思われる。覇権運営は失敗するとコスト高なので、とくに中国は従来、米国覇権(の一部)を自国が代替することに消極的だったが、アフリカ中南米や中東などの諸国から、ぜひ覇権をとってほしいと頼まれ続けているので、もはや「いやです」と言いにくい。習近平は先日の党大会で、米国の覇権を中国がとっていく方向を宣言した。米軍が「アフリカ諸国の軍幹部の動向なんて見ていません」とうそぶいている間に、静かに多極化が進んでいる。

In Groundbreaking Speech, Xi Vows To Guide China To “Incomparable Glory”, An Alternative To The US

(無料メルマガ『田中宇の国際ニュース解説』2022年10月19日号より一部抜粋・敬称略)

image by: Fred Marie / Shutterstock.com

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