2年で9回。なぜアメリカは西アフリカでクーデターを頻発させるか

 

だが、植民地が独立して建国した新興大国は、英国の世界覇権の支配体制を壊そうとする。英国内の「帝国」の側は、「資本」の側による新興大国づくりの策略(謀略)を隠然と阻止した。覇権運営の帝国側は、資本側との政治力学上、諸大陸の植民地の独立自体は容認したが、その前段階で他の列強を誘ってアフリカや中東を分割するなど植民地を細切れにしておき、英国の世界支配を凌駕・破壊しかねない大きな新興国の出現を阻止した。帝国側は、資本側の希望をかなえてやるふりをして破壊した。世界は、すべての植民地が独立したものの、200近い細切れの国家群になった。

覇権の起源

米軍がアフリカの将校たちにこっそりクーデターのやり方を教えてアフリカを不安定にしているのも、19世紀から帝国側が続けてきた、新興大陸を弱いままにしておく策略の一環なのか??クーデターを頻発させなくても、アフリカは十分に分裂・内紛しており、不安定で弱い。覇権国である米国がアフリカを放置しても、アフリカが結束して米覇権を脅かす新興勢力になることはない。米軍がクーデターを頻発させ、アフリカの分裂と混乱に拍車をかけることは、米国にとってむしろ覇権運営のコストを引き上げる有害な行為になっている。米国はアフリカだけでなく、中南米や中東など世界中の途上諸国で、内戦誘発や政権転覆や経済制裁をやり続け、混乱や弱体化を世界に強要している。米国は世界を混乱させ、自分たちの覇権運営のコストを引き上げる愚策をやっている。2001年の911事件後、その傾向が強まった。なぜこんなことになっているのか。

US Threatens African Nations With Sanctions If They Buy Russian Products Other Than Grain

一つ考えられるのは、これが「帝国」の側でなく「資本」の側の謀略でないか、ということだ。以前から書いていることだが、911後に米覇権運営の主力勢力となったネオコンやタカ派は、あちこちの途上諸国や新興諸国に人権侵害やテロ支援の濡れ衣をかけて経済制裁や政権転覆、内戦誘発の試みを過激に稚拙にやり続け、米国覇権を崩壊させることを意図的にやっている。ネオコンはCFR(ロックフェラー系の覇権戦略の検討組織)のメンバーが多く、資本側の勢力だ。彼らは、途上諸国を弱体化して米覇権を保持する帝国側の勢力のふりをして、その策を過激に稚拙にやり続けて逆に米覇権を自滅させ、中国ロシアなど新興諸国が団結して米覇権に替わる多極型覇権体制を構築することを後押しする資本側の勢力(隠れ多極主義者)である。ネオコンは民主党と共和党を行ったり来たりしている。今のバイデン政権も、人材的にでなく政策的にネオコンを継承している。

Africa Is Becoming China’s “Second Continent” As US Lags Behind
多極化の本質を考える

米国はクーデター誘発などでアフリカを不安定化し続けているが、ロシアや中国は逆に、アフリカを安定させようとしている。中国はアフリカ諸国に資金を貸し、交通インフラ整備や資源開発を手がけている。米国側のマスコミ権威筋は、中国がアフリカを借金漬けにしていると非難しており、建設したがうまく機能していない案件もあるが、全体として、中国はアフリカを発展させている。中国より米欧の銀行の方がアフリカへの融資総額が多く、借金漬けにしている。近年はロシアと中国が協力してアフリカの発展を助けている。これまでの100年間、米英がアフリカを混乱と貧困の中に置き続けてきたのと対照的だ。アフリカ諸国は、アフリカ連合を作って国際紛争や内戦など政治経済の問題を解決しようとしているが、そこでも中露がアフリカに協力している。米国(や英欧)がアフリカを混乱・不安定化する策をやるほど、アフリカ諸国は「米欧より中露の方がましだ」と考え、中露に頼るようになり、米国から中露への覇権移転を望むようになる。

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