小林よしのり氏が猛批判。ロシアを擁護する鈴木宗男氏の呆れた「北方領土」発言

 

ヤルタ協定は、ドイツ軍の最後の猛反撃を受けて一時守勢に立っていたチャーチルと、日本軍との決戦を前に北方からの支援を欲していたルーズベルトが、スターリンに譲歩しまくってまとめた「秘密協定」であり、国際法としての効力を持たない。

実際、日本は当事国であるにもかかわらず、当時はその存在すら知らなかったとして無効を主張しているし、アメリカも戦後になって「政府の公式文書ではなく無効」と表明している。

したがって、ヤルタ協定は合法性の根拠とはならないのである。

国連憲章の「旧敵国条項」については、1995年には国連総会で「時代遅れ」として「将来の最も早く、適切な会期に憲章改正手続きを開始する」との決議を賛成155、反対ゼロで採択している。

実際には手続きが大掛かりになることなどから作業が進まず、条文は今も残っているが、この決議で事実上条項は効力を失っていると言っていい。

しかもそれ以前に、旧敵国が国連に加盟した時点で条項は無効になっているという解釈もあり、ドイツは「既に死文化している」として問題視していないという。

さらに、旧敵国条項を根拠に北方領土占拠の正当性を主張してきた当のソ連も、冷戦終結と共に態度を軟化させ、1991年にはゴルバチョフ大統領が海部俊樹首相との「日ソ共同声明」において、「旧敵国条項がもはやその意味を失っていることを確認する」としている。

また、ロシアも旧敵国条項を「時代遅れ」とする1995年の国連総会決議に反対していない。

ポツダム宣言では第8条で「カイロ宣言の条項は履行されるべき」とした上で、日本国の主権は「本州、北海道、九州及び四国ならびに我々の決定する諸小島」に限ると規定されている。

ロシア(と鈴木宗男)はこれを根拠に、北方領土は日本の領土ではなくなったと主張している。

ところがポツダム宣言では、どこが「我々の決定する諸小島」になるのか、具体的には指定されていない。

しかも、ここで「履行すべき」としているカイロ宣言には、日本に対する要求を記した条項と共に、「同盟国(アメリカ、イギリス、中華民国)は、自国のためには利得も求めず、また領土拡張の念も有しない」との一文が明記されている。

ポツダム宣言に基づき日本がカイロ宣言を履行するならば、戦勝国側もカイロ宣言に基づき、日本から領土を奪って自国の領土拡張をしてはならないのであり、ソ連が北方領土を奪ったことは、明らかにカイロ宣言に違反する。

それとも、ソ連はカイロ宣言に加わっていないから適用外で、日本から領土を奪ってもいいとでも言うのだろうか?

また、サンフランシスコ平和条約には「日本国は、千島列島並びに日本国が1905年9月5日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」という条文がある。

ロシア(と鈴木宗男)は、これも北方領土の占拠を正当化する根拠としている。

だが日本政府は、北方領土は千島列島に含まれず、放棄していないとしているし、そもそもソ連はサンフランシスコ平和条約に署名しておらず、同条約上の権利を主張できる立場にないのである。

そして何よりも強調しておかなければならないのは、ソ連は当時まだ有効であった日ソ中立条約を無視して対日参戦し、日本のポツダム宣言受諾後も攻撃を続け、1945年8月28日から9月5日までの間に、北方四島を不法占領したという事実である。これが全ての前提であることは絶対に忘れてはならない。

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