カルト教団にメスは入るか?崖っぷちの岸田首相、統一教会「一掃」の本気度

 

一部には、世間の関心を癒着政治家狩りから調査に向けるためではないかという見方すらある。なにしろ、岸田内閣の閣僚には、山際大志郎経済再生担当大臣という、統一教会疑惑のツワモノがいる。これまで、教団との関係や関連する会合への出席を指摘され、そのたびに会見で人ごとのように追認するということを繰り返してきた。間違いなく、この臨時国会における野党の最大のターゲットだ。

こうした追及を少しでもかわすためには、「今後は統一教会と関係を断つ」という自民党の方針に信ぴょう性を持たせる必要がある。

自民党は統一教会について、どのような団体だと考えているのか。今まで一度も独自見解を示したことがない。「社会的に問題が指摘される団体」と言うばかりだ。党が安倍派に忖度して統一教会に踏み込めないのなら、政府がやるしかないということだろう。

この調査について、全国霊感商法対策弁護士連絡会は声明を発表し「旧統一教会の被害を撲滅するための重要な一歩」と評価する一方、「宗教法人法に基づく要件は既に満たされており、今から質問権行使を行うことは、いたずらに時間を費消し、被害が拡大する懸念も否定できない」と指摘している。

10月17日の予算委員会で、野党議員から「いつまでに調査を終わらせるのか」と問われた岸田首相は「いままで使われたことない権限を行使するので断定できない。調査結果が出なければ救済についてなにもできないというわけではない」と答え、迅速性についてやや不安を残した。

永岡桂子文科大臣は、宗教法人審議会に調査の実施を諮問し、具体的な調査項目などについて意見を聞いた後、調査に入る方針だが、あまり丁寧な手続きを踏みすぎて長期間を要するとなれば考えものだ。

文化庁によると、問題行為を理由に解散命令が出た宗教法人は、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教と、霊視商法詐欺事件を起こした明覚寺の2例しかない。

オウム真理教への解散命令は憲法の保障する信教の自由に反しない、という最高裁の判断(1996年1月30日)が以下のように示されている。

大量殺人を目的として計画的、組織的にサリンを生成した宗教法人について、宗教法人法に規定する事由があるとしてされた解散命令は、専ら宗教法人の世俗的側面を対象とし、宗教団体や信者の精神的・宗教的側面に容喙する意図によるものではない。右宗教法人の行為に対処するには、その法人格を失わせることが必要かつ適切である。

統一教会への調査について、政府・与党内には「信教の自由を侵しかねない」との慎重意見も根強い。だが、この判例からみても心配無用なのではないか。解散命令は、「宗教法人の世俗的側面を対象」とし、宗教的側面を対象としていないからである。宗教法人格を失い、税制優遇などが受けられなくなっても、宗教活動はできるのだ。

政府の本気度がどれほどのものかは今後を見るしかないが、調査の実施が、統一教会問題を解決し、被害者の救済を進めるための第一歩であることは間違いない。

裁判の積み重ねによって、統一教会の不法行為の数々や、反社会性は明らかになっている。そのうえでの調査であり、被害の拡大を防ぐためにはスピードが求められる。

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