トランプ復権に繋がるか。在米作家がアメリカ中間選挙を大胆予測

 

6)共和党の場合は、トランプ復権の是非が隠された争点…に見えたのは少し前の話で、現在は「粛々としたトランプ離れ」が進行中。但し、いわゆるトランプ票を投票所に引っ張れるかは、各候補の命運を左右する。従って、お経のように「2020年の選挙は盗まれた」という文言が通用する世界になっている。ただ、そのお経を唱えたからといって、その候補がトランプ派というわけではない。もっと言えば、「グローバリスト+減税論で小さな政府=クラシックな共和党」対「現状破壊、アンチエリートのトランプ派」の対立というのは、民主党内の対立ほどには見えない。

7)個別の問題としては、局所的に移民(主としてホンジュラス+ベネズエラ難民)問題、それから都市での治安問題(特にNY)が争点化している。

8)ロックダウンやマスク強制への反発といった「コロナ政争」は、いつの間にか過去形に。

といった状況が指摘できます。更にテクニカルな問題としては、

9)基本的に中間選挙の投票率は低い(50%前後)ため、中間無党派層の票を無理して引っ張るよりも、自党の消極的支持層に投票させて、他党の消極支持層を棄権に追い込むという戦術が取られる。従ってネガキャンがフルパワーで進行中。

10)今回は、2020年の選挙で保守州の州議会を共和党がかなり押さえており、これを利用して選挙区の区割りを有利に変更している(ゲリマンダーの一種)。特に、現職を有利にするというだけでなく、リベラル票の選挙区を分割して、保守的な市町村に合併させて「リベラル票を薄める」など、かなり露骨な作戦を実施している選挙区がある。このため、下院は最初から共和党有利という状況。

という問題があります。

全国的な傾向といいますか、前提条件として以上の点を頭に入れて、では現時点の予想はといいますと、

下院定数435過半数218

共和党 現有212==>選挙後223

民主党 現有220==>選挙後212

※現在は欠員3

という辺りがあらゆる政治サイトの基本合意になっています。また、現時点でのモメンタムに関していえば、NY州の北部で民主党議席に対して共和党が猛追という報道もあり、共和党がここから1議席から2議席伸ばすかもしれない情勢です。

ということで、下院に関しては、最初にご紹介した要素の中で、10)の区割り問題でそもそも共和党が有利であり、これに、2)のインフレ批判、3)の移民や治安の問題が加わることで、民主党は多数派を喪失する可能性が高くなっています。

一方で、上院はどうかというと、

上院定数100過半数は副大統領の最後の一票があるので与党の50

民主党 現有50==>選挙後50

共和党 現有50==>選挙後50

で辛くも民主党が多数派維持というのが、多くのサイトの見立てとなって
います。

今回は、このうち上院の勝敗を左右する「スイングステート」の中で、「OH(オハイオ州)」と「PA(ペンシルベニア州)」に注目したいと思います。現在、この2州を「トスアップ(拮抗)」としているサイトが多いだけでなく、今後の政局を占う上での試金石となるからです。

数字的には、OHとPAを抜きにして、上院の全体は「49対49」というのが大方の見方です。勿論、「AZ(アリゾナ州)」でケリー(民主、現職、優勢)が敗けてしまうとか、「NV(ネバダ州)」でコルテス=マッツオ(民主、現職、劣勢)が勝ってしまうという可能性がないわけではないと思います。また、「GA(ジョージア州)」でウォーマック(民主、現職、優勢)がスキャンダルまみれの挑戦者ウォルカー(共和、新人)との間で開票結果が大トラブルになる可能性もあるでしょう。

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