「作曲家が逮捕されても楽曲に罪はないのか?」そんな論争がネット上で巻き起こっている。きっかけは、「ウマ娘プリティダービー」「アイドルマスター」などの楽曲の作曲・編曲を手がけている作曲家の田中秀和容疑者(35)が10代女性への強制わいせつ未遂容疑で警視庁碑文谷署に逮捕されたことだ。多くのファンがこの逮捕にショックを受けているが、アニメやゲームの配信停止やDVDなどの発売禁止を心配する声があがる中、「被害者の気持ちを考えろ!」という意見もあり、ネット上ではファンやアニメ関係者を巻き込んだ罵り合いが起きている。
作曲家の逮捕で人気ゲームが「販売停止」「イベント中止」危機
田中容疑者は8月20日午後10時半ごろ、東京・目黒区内の駅近くの駐輪場で、面識のない10代の女性に声をかけ、わいせつな行為をしようとしたという。認否はあきらかではないが、警察の調べでは「別の駅で女性を見かけた、同じ電車に乗って後をつけた」と証言しているようだ。
田中容疑者は2010年、音楽クリエイター集団「MONACA」に就職し、音楽活動を開始。以来、チームの中心としてゲーム「アイドルマスター」シリーズ、「ウマ娘プリティダービー」、アニメでは「アイカツ」「灼熱の卓球娘」「這いよれ! ニャル子さん」、また人気声優やYouTuberたちへの作曲・編曲を担当している。
その独特な疾走感と高揚感あふれるコード進行、転調が特徴で、田中容疑者は「天才」あるいは「変態」と評価されていた。
逮捕の知らせに一番衝撃を受けたうちの一人が、耳コピのピアノ演奏で知られる登録者166万人を誇るYouTuber「ゆゆうた」だった。ゆゆうたは田中容疑者の作曲・編曲した「灼熱の卓球娘」の主題歌「灼熱スイッチ」から、自身のYouTubeの軸を「耳コピ演奏」にすることを決意したという。
ゆゆうたは、田中容疑者の独特のコードBlackadder Chord(ブラックアダー コード)にエロスの匂いを感じ取り「イキスギコード」と名づけている。
ゲーム実況の最後で田中容疑者の逮捕を知ったゆゆうたは「(逮捕を知ったら)その曲作りの秘密に、裏を感じざるを得ない……」とおののいていた。
常習犯か?声優・アイドルに犠牲者はいるのか?
犯行がおこなわれたのは8月で、現行犯逮捕ではなかった点からも、警察による入念な捜査があったものと思われる。
他の駅から女性を追いかけて電車に乗る手口もあったようで、田中容疑者の余罪を疑う声も多い。
「アイドルマスターシンデレラシリーズ」のメイン声優に抜擢された大橋彩香、声優ユニットの「サンドリオン」の結成当時のメンバー川田澪や会沢紗弥、そして「アイカツ!」の歌唱を担当したSTAR☆ANISやアイドルグループ「わーすた」など、田中容疑者の作る楽曲の性質上、10代の女性を起用するケースが多く、彼女らが田中容疑者の「毒牙にかかった」可能性を疑われてもしかたがないというものだろう。
こうした噂について、「真実」が暴露される日も近いのかもしれない。
配信停止か? 影響を受ける作品は?
田中容疑者の逮捕で懸念されるのが、担当した楽曲が使われているゲーム・アニメの発売・配信停止だ。
特にアイカツシリーズは来年10周年をひかえており、田中容疑者が手がけている作品の中でも大きな影響があるのは必至だ。ネット上でも来年2月の記念ライブなどの影響を心配する声があがっている。
1番可哀想なのが、来年2月に10周年ライブをするアイカツと同じく2月に5ブランド初の合同ライブをするアイマスの2作品やな…
出演する声優はずっと前からライブ練習してるし……
— 夢幻 (@mugen4869) October 25, 2022
これで思い出すのが「アクタージュ」原作者の一件だ。2020年に週刊少年ジャンプで連載されていた「アクタージュact-age」の原作者マツキタツヤ氏が、未成年への強制わいせつで逮捕されると、漫画の内容と同じように新人女優をオーディションで発掘して舞台化する計画が中止となり、ジャンプの連載もなくなった。
以後、マツキタツヤ氏の名前を見ることはなく、作画担当だった宇佐崎しろ氏は主にインディーズで活躍している。
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「少女が女優をめざす」という物語の作者が、未成年に対するわいせつ行為で逮捕されては、そんな作品を未成年に提供できるはずがないのは当然だ。未完のコミックス12巻は無期限販売停止になり、今のところ再販売される様子はない。
同じく田中容疑者が楽曲を手がけた「アイマス」「アイカツ」「Wake Up, Girls!」なども、少女がアイドルの道を歩むという未成年少女の「憧れの世界」が描かれている。
そして、「ウマ娘プリティダービー」は大人気のゲーム作品だけに、その影響はかなり大きいと思われる。
田中容疑者の楽曲を聴いて育ったというある女性は、田中容疑者の作った曲について「気持ち悪くて2度と聴けない」と嘆いていた。
このままでは、関係作品が「配信停止」「販売中止」そして関連イベントも「開催中止」になる可能性も否定できないだろう。