なぜ「産前産後休業」の代わりに年次有給休暇を申請する社員がいるのか?

Asian pregnant woman working in the office.Asian pregnant woman working in the office.
 

妊娠中の女性労働者については、労働基準法で産前産後は働いてはならないと定められています。その際、従業員は「産前産後休業」を請求することが多いと思いますが、実は「有休」で休む人もいるようです。無料メルマガ『採用から退社まで!正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者である社会保険労務士の飯田弘和さんは、その差についての解説も含め、産前産後休業というものについて詳しく紹介しています。

出産予定の社員が「産前産後休業」ではなく有休取得で休むことは可能なのか?

ある会社さんからのご相談です。

「もうすぐ出産する予定の労働者が、労基法上の産前産後休業を取得せずに、年次有給休暇を取得して休みたいと言ってきました。認めなければならないのでしょうか」

労働基準法では、妊娠中の女性労働者に対しては、出産予定日の6週間前から産後8週間までの間、その女性労働者を働かせてはならないことになっています。ただし、出産前の6週間については、あくまで、その労働者からの休業の請求が必要です。請求がなければ、会社はその労働者を休業させる必要はありません。請求をしなければ、労働者は働き続けることができます。労働者の中には、産前休業を請求せずに、年次有給休暇を取って休む人もいます。このようなことも、当然に認められます。

※ 産前休業中に健康保険から支給される“出産手当金”よりも、年次有給休暇を取得した際の賃金の方が高いのが一般です

※ また、健康保険被保険者でない労働者の場合、産前休業を取っても出産手当金の支給はなく、その間の収入がなくなるので、年次有給休暇で休むことが多いです

出産後8週間については、労働者本人の希望や請求とは関係なく、必ず休業させなければなりません。よって、産後休業中については就労日がないので、年次有給休暇を取得することはできません。ただし、産後6週間を経過した女性労働者が仕事への復帰を請求した場合には、医師が支障がないと認めた業務に就かせることができます。

ところで、ここでいう“出産”とは、“妊娠85日以上の出産”のことをいいます。また、流産や死産であっても、妊娠85日以上であれば出産として扱われます。そのため、流産や死産後は産後休業期間となり、働かせることができません。

細かい注意事項ですが、“産前6週間”の計算は、出産予定日を基準として計算します。出産予定日および実際の出産日は”産前”に含めます。出産が予定日よりも遅れた場合には、出産予定日から実際の出産日までの期間は、産前の休業期間となります。また、産後8週間の計算は、現実の出産日を基準として計算します。よって、実際の産前産後休業は、合計で14週間(産前6週・産後8週)よりも伸びたり短くなったりします。

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【著者】 飯田 弘和 【発行周期】 週刊

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