まったく逆の目線から読むと…
さて、ここまでの話を、まったく逆の目線、「後藤氏に対して、家族と一緒に脱会を説得した立場」から語った記事がある。
2010年、家族が後藤氏を見放してから2年後に『月刊タイムス』に掲載された座談会記事で、説得を行った牧師の宮村峻氏、神学博士の浅見定雄氏、有田芳生氏などが発言している。
宮村牧師によると、後藤氏の父親からはじめて連絡があったとき、父親は癌で余命3カ月の状態で、「このまま死ぬのはたまらん。宮村さん、どうしても徹と話してもらえませんか」と依頼されたという。
その後、父親が亡くなり、家族からの連絡で後藤氏と会うようになり、月に7~8回、10カ月間で80回ほど話した。
その結果、後藤氏が導きだした答えは、「統一協会の教えも活動もすべてがデタラメだとわかった」。だけど、「自分は自分のしたいことをする。なぜ、お前に止める権利があるんだ」だったという。
「統一協会が正しいからやりたい」というなら、それはデタラメだと教えられるが、デタラメでもやりたいとなると、説得できない。宮村牧師は、後藤氏の元に通うのは辞めた。その後、家族が説得をつづけたが、途方に暮れて追い出すことになったという。父親の無念を思い、12年間以上粘ったものの、疲労困憊してしまったのだろう。
また、説得に関わった神学博士の浅見氏によれば、お父さんが亡くなった後は、お兄さんが関わっていられなくなり、後藤氏と一緒にいたのは、いつも女性である母親と妹だけだったという。 女性2人から12年間も「監禁される」などあり得るのか?
宮村牧師 「彼は身長が180センチ以上あるのに、お母さんと妹さんは155センチくらいしかない。しかもマンションの部屋には、この間に電気屋が入ったり、足場をかけてマンション全体の外装工事もしているんです」
浅見氏 「マンションから立ち去ろうと思えばできるのに、そうしない。不貞腐れて出て行かなかったんです。本人に統一協会について考える気持ちがもうなかったのでしょうか」
痩せこけて車いすを使っている写真に対しても、時系列が疑われている。
母親と妹が出ていけと言ったとき、本当に写真のように痩せこけていたのか。子どもを心配して統一協会から救出しようとした親が、こんな状態で「出ていけ」とは言わないのではないかという疑問だ。
歩いて協会本部まで帰ったのに、立つことも困難で車いすを使っているというのは、やはりおかしな話で、この座談会では、「追い出されたあとに断食でもやれば、この写真みたいになっちゃう」という意見も出ていた。
しかも、後藤氏が、家族・親族に取り囲まれて、「無理やりワゴン車に押し込まれて拉致監禁された」という話も、「自ら歩いて車に乗って、しかるべき場所に向かった」というのが事実だという。
後藤氏は、拉致監禁被害の広告塔だった
もはや、『Hanada』で紹介された証言のすべてがあやしい。
そこで、この後藤徹氏について調べてみると、なんと現在、統一協会の「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」の会長であることがわかった。
ホームページには、自分で絶食したという事実も、自分が玄関に突進するなど暴れたという事実もすっかり省いて、「家族から一方的に暴力を振るわれた」「拉致監禁され、食べ物も与えられなかった」というストーリーに仕上げた漫画が公開されている。
また、『Hanada』のルポには、もう1人、家族と牧師から監禁されたと主張する信者が登場するのだが、こちらも、後藤氏と共に熱心に「被害者」活動を行っていた。脱会説得から逃げ出した体験を綴った著書を、統一協会の出版社から出している人物でもある。
『Hanada』の記事は、完全に、統一協会による「脱会説得者を“犯罪者”呼ばわりするキャンペーン」を担ったものなのである。
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