このデサントスという人ですが、とりあえずフロリダの知事としては「ミニ・トランプ」の異名の通り、右派ポピュリズム的な政策や言動で著名です。人気の秘密もそこにあるのは事実です。
「マスクやワクチンの義務化を禁止」
「学校現場でのLGBTQカミングアウトを禁止」
「LGBTQに配慮しすぎとディズニーワールドに圧力」
「難民申請中の不法移民を、大勢バスに乗せてNYなどへ送りつけ」
という具合に、とにかく右派のポピュリズムに訴える政策を「これでもか」と繰り出してきているのは事実です。その一方で、経歴を見ますと、トランプとは全く違うのもまた事実です。
「大学はイエール大。野球部のキャプテン。しかも卒業時には優等生表彰」
「大学院はハーバードの法科・しかも卒業時には優等生表彰」
「軍歴あり。海軍特殊部隊(SEALS)として、イラク戦争の戦功に対して勲章授与」
という華々しい経歴です。さらに言えば、1978年9月生まれの44歳という若さ、また国政経験はなく、知事としての行政経験を引っさげて中央政界を狙っている、つまりレーガン、クリントン、ジョージ・ブッシュのカテゴリに入るわけです。
恐らくデサントスは、今回の選挙で大勝してフロリダ知事として州民の信任を得るでしょう。問題はその先です。トランプは、11月14日(月)に「大統領選の出馬声明をする」ことを強く示唆しています。デサントスとしては、今後の進路としてまず直近の行動としては3つの選択肢があると考えられま
す。
a)14日以前に自分が出馬声明をしてモメンタムを引き込み、トランプを出馬断念、自分の支持に引き込む。
b)トランプの出馬宣言を受けて、悠然と自分も出馬宣言し、堂々と予備選で対決する。
c)トランプが出馬の場合は、自分は断念して支持に回り、2028年を目指す。
どれも難しい選択になります。c)が合理的で、少し前までは、こうなるという観測が多かったのですが、現在の「デサントス待望論」は、そんなことは許さないでしょう。一方で、常識的には b)ですが、怨念を残すとトランプのファン本選で投票所に来ないということとなります。では a)となると、結局トランプも出馬してよりメチャクチャな泥仕合になる可能性もあります。
とにかく、中間選挙の行方も大事ですが、直後から始まる2024年へ向けての予備選の前哨戦は非常に気になるところです。
一方で、民主党陣営も同じような事情を抱えています。バイデンがどんな判断をするかということが大きな注目点です。バイデン自身は、24年に出るかどうかは「家族と相談して決める」としています。うまい言い逃れですが、要するに家族(ジル夫人など)が反対したら「出ない」ということも十分にありえるわけです。選択肢は3つあります。
d)自身が出るという判断もまだあると思います。その場合には、では予備選は回避されて現職で候補がまとまるのかというと「そうではない」と思います。仮に出馬するが、予備選の洗礼を受ける場合は、例えば副大統領のハリスは出ないとしていますから、非常に荒れた予備選となりますが、それはそれで新たな党の活力になるかもしれません。ですが、高齢のバイデンが健康をすり減らしてでも党内の予備選を戦うかは分かりません。
e)4年は完走するが、ハリス後継指名をして、1期で引退というシナリオはあると思います。その場合も、ハリスは不人気なので予備選は回避できないでしょう。
f)ハリスを強引に後継にするために、2023年1月21日以降に「大統領辞任」という手段に出る可能性もあります。どうして1月21日以降なのかというと、その場合は、ハリスは大統領昇任後の「バイデンの残り任期」が2年に満たないので、後2回選挙に出られて通算10年大統領ができるからです。例えば、AOC(アレクサンドリア・オカシオコルテス)が予備選出馬を匂わせて、ハリスを脅かすような場合に、どうしても予備選を回避もしくは回避できなくても、ハリスを有利にするためには、この手段があります。また、健康や家族の反対で、本当に2年を残して辞任してしまうという可能性もありま
す。
常識的には d)で、当面大統領職にとどまり、予備選の挑戦を受けた場合も受けて立つという構えになると思いますが、e)f)の可能性も十分にあると思います。
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