“トランプ隠し”で大成功。米国「中間選挙」で共和党がとった巧妙な戦術

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いよいよ投開票を迎えたアメリカ中間選挙。各種メディアは事前予想として共和党の優勢を伝えていましたが、何がバイデン政権にとって「逆風」となったのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、共和党が無党派層に支持を浸透させた5つの理由を指摘し、それぞれについて詳細に解決。さらに民主・共和両党の次期大統領候補決定を巡る今後の動きを予測・考察しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年11月8日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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“トランプ隠し”が奏功、中間選挙の直前情勢は共和党有利

今回の中間選挙ですが、まず、夏までに行われていた共和党の予備選では、トランプ前大統領が推薦する候補が圧倒的な強さを見せていました。つまり、共和党の現職である議員や知事、あるいは穏健派の候補に対して、トランプ派の候補がどんどん統一候補の地位を奪っていったのです。一部の統計では、予備選におけるトランプ推薦候補の勝率は、166勝10敗で勝率は94%という数字もあるぐらいです。

この時期には、トランプ派の主張は極端すぎる、例えば「2020年の大統領選でのバイデン勝利はウソだ」などという主張は、無党派中間層には敬遠されるに違いない、そうした分析がされることが多かったわけです。事実、共和党本部はこうした予備選の推移に頭を抱える局面もあったし、例えば、「トランプ派の候補は、個々の候補者の質が悪く、本選では競り負ける」という見方もありました。

これは2022年7月頃の見方で、その後、予備選が確定して本選に進む中では、下院は共和党が僅差で優勢、上院は民主党が多数を死守というような流れになっていました。9月から10月にかけて、ガソリン価格がやや沈静化するとか、度重なる連銀の利上げにも耐えて、株価の暴落は起きなかったなど、社会的には落ち着いた感じが出ていたのも事実です。

何よりも、コロナ禍の沈静化というのは大きかったように思われます。アメリカでは、既にオミクロン拡大後期からは、なし崩し的にマスクをはじめとする感染対策は、全米で「終了」となっており、ほぼ100%あらゆる市民生活が「ノーマル」に戻っています。これも、ある程度は社会の平静に寄与しており、与党民主党の党勢も落ち着いたかに見えました。

ところが、10月中旬以降、徐々にその雰囲気が変わって来ています。共和党が優勢となり、特に中間の無党派層に支持を浸透させています。理由としては5つほど指摘ができると思います。

1)何と言ってもインフレです。10月下旬からは、改めてガソリン価格が高騰に転じていることもあり、益々もって苦痛の感覚が強まっています。食料品も相変わらず高く、卵は鳥インフル騒動以来ずっと1ダース4ドル(600円)の水準が続いています。また、飲料、小麦粉、砂糖など「値段は張らないが重い」食料品は、軒並み倍になっています。

一方で、都市部の家賃相場はどんどん上がっており、契約更新時に「25%アップを提示された」などという話が当たり前になっていますし、勿論、そんな条件は呑めないので、大都市から人口が流出しているという傾向もあります。そうした場合には、やはり当事者たちは世相への嫌悪、そして現職大統領への悪印象を増幅させる事となっています。

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