年功序列型の昇進形態が当たり前ではなくなった昨今、年上部下や年下上司との関係に頭を悩ますビジネスマンの声が多く聞かれるようになっています。時にはそんな複雑な人間関係が、思わぬ悲劇を生むことも。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者で特定社会保険労務士の小林一石さんが、早期昇進が原因で起きたいじめ事例の顛末を紹介。さらにそうした事態を防ぐため企業がなすべきことを提案しています。
早期昇格で同僚たちからいじめ、労災は認められるのか
今から数年前の話です。某男性アイドルが、引退して所属事務所の副社長になるというニュースが流れました(先日、退所されたようですが)。
そのとき一番最初に思ったのが「人間関係が大変そう」でした(決してその事務所や所属タレントを否定する意図ではありません、念のため)。今は退所してしまった人も多いですが、その当時はその某男性アイドルよりも芸歴の長い先輩もたくさんいたからです。その事務所は、先輩後輩の上下関係もきっちりしているイメージだったのでなおさらです。
また、普通の会社のように出世競争のようなものがどれくらいあるかはわかりませんが、その先輩の中には社長を目指していた人もおそらくいたはずです(実際に次期社長と噂されていた人もいましたし)。その人からは「なんで(後輩の)あいつが副社長なんだ!」と思われていたとしても不思議ではありません。
みなさんの中にも「先輩の上司になった」「後輩の部下になった」のいずれかの立場を経験した人もいるかも知れませんが、その人間関係は結構大変だったのではないでしょうか。
では、どれほど大変か?それについて裁判があります。
ある幼稚園で、早くに昇格したことで対立した同僚や、上司からのいじめでうつ病が発症したとして、その幼稚園に勤める先生が労災申請を行いました。
ところが、この労災申請が認められなかったため、裁判を起こしたのです。
ではこの裁判はどうなったか。
先生が勝ちました。その理由は次の通りです。
- (この先生が)副主任になったものの、この幼稚園では経験年数を上回る同僚を差し置いての昇格だったのに加え、上司とも感情的な対立が存在し、就任直後から、困難な人間関係であった
- (いじめを)個々に評価すれば必ずしも客観的に心理的負担の大きなものであるとはいえないが、対立関係やストレスを原因とする胃潰瘍により体調不良の状態で、心理的負荷をさらに増大させる要因になったとみることができる
- それらを総合的にみると、心理的負荷は「強」(労災認定基準)であったというべきである
いかがでしょうか?仕事における人間関係は「上司になった後輩」と「部下になった先輩」に限らず、大変なことはもちろんたくさんあるでしょう。