中国在住邦人17万人が拘束も。台湾有事で起こりうる最悪のシナリオ

2022.11.12
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先日掲載の「中国軍機の領空侵犯は既に“攻撃”。台湾有事は国防部長の発言で近づいた」では、中国による台湾軍事侵攻は「起きるか、起きないか」という段階は既に過ぎ、「いつ起きるか」という次元に迫っているとした、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。もはや不可避となった台湾有事が勃発した場合、日本はどのような状況に置かれることになるのでしょうか。アッズーリ氏は今回、考え得る最悪のシナリオを紹介。さらにこのタイミングでチャイナリスクを無視するかのような動きを見せる日本企業に対して、批判的な目を向けています。

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最悪のシナリオは台湾有事→日中関係崩壊→拘束・人質にされる在中国日本人の増加

10月の共産党大会で習氏の事実上の終身雇用が正式に決まった。2018年3月、2期10年までとする国家主席の党規約を撤廃した時点で習氏の終身雇用は事実上決まっていたが、今後習氏による対外的強硬姿勢はいっそう強化されるであろう。新たな最高指導部も習氏の側近たちで占められ、イエスマンしか選出されなかった。3期目になっていっそう習カラーが色濃くなった形だ。共産党大会の最終日、胡錦濤前国家主席が退場させられたが、これも新たな時代の到来を予感させるシーンとなった。

共産党大会での演説で、習氏は2035年までに社会主義現代化を確実にし、中華人民共和国建国100年となる2049年あたりまで社会主義現代化強国を推し進めていく方針を明らかにした。また、気になるのは中国式現代化という言葉で、これは明らかに欧米流の発展モデルではない独自のプロセスで発展と繁栄を獲得するという習氏の決意である。社会主義現代化強国、中国式現代化という言葉からは、習氏の米国へのライバル心が強くうかがえる。

2013年、国家主席になったばかりの当時の習氏は米国を訪問した際、オバマ元大統領に対して太平洋には米国と中国を受け入れる十分な空間があると発言したことがあるが、習氏は終身雇用の中で太平洋の西半分で影響力を確保できるよう、中国の大国化を推し進めていくことだろう。

そして、それを推し進めていく上で重要になるのが台湾だ。習氏には台湾の香港化を実現させ、そこを軍事的最前線として西太平洋へ進出し、米軍に対抗する狙いがある。よって、台湾統一への行動が3期目で開始されることは疑いの余地はなく、問題はいつ起きるかだ。台湾有事の時期については多くの指摘があるが、仮に有事となれば日本は米軍を支援するだけでなく、中国軍が嘉手納基地など沖縄の軍事的拠点を空爆することになり、その時点で日本有事となる。要は、日中の間でも戦争が行われる恐れもあり、日中関係は一気に冷え込むことになる

そうなれば、中国は軍事や安全保障だけでなく、経済や貿易、サイバーなどあらゆる領域を駆使したハイブリッド戦を展開してくるだろう。日中の国力差はどんどん離れており、ハイブリッド戦で日本は多大のダメージを被ることは避けられないだろう。この時点で日中関係は崩壊すると言っていい。

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