中国在住邦人17万人が拘束も。台湾有事で起こりうる最悪のシナリオ

2022.11.12
 

中国を危険な国だと認識する必要性

そして、懸念されることの1つに在中邦人の拘束がある。皮肉なことに、今後の日中関係は冷え込む可能性が高いにもかかわらず、中国は日本にとって最大の貿易相手国である。最近ではチャイナリスクを懸念して中国から工場を日本に回帰させたり、中国を通さないサプライチェーンの強化に乗り出したり、企業の間でも脱中国の動きが以前より顕著になっている。しかし、最近も、ニトリホールディングスが来年末までに中国国内で展開する店舗を100にまで増やす方針を発表し、村田製作所は江蘇省にある工場で445億円を投じて生産棟を新たに建設するという最大規模の設備投資を発表するなど、チャイナリスクを無視するかのような企業もある。この時期にむしろ中国依存を増やすなどは極めて危険な対応である。

中国には今でも17万人あまりの日本人がいる。日中関係が崩壊すれば、中国では邦人拘束が増えることは想像に難くない。今年に入っても7月、昨年12月に上海でスパイ行為の疑いで50代の日本人男性が拘束され、6月に正式に逮捕されたことが判明した。日本政府は逮捕容疑や健康状態について中国当局に働きかけたというが、依然として同男性の詳しい健康状態や逮捕理由などは分かっていない。

今年2月には服役中だった70代の男性が死亡した。そして10月には、2016年にスパイ活動をしていたとして逮捕され、6年の実刑判決を受けた60代の男性が刑期を終えて帰国した。同男性は、判決自体も一切いわれのないもので、服役中は多くの監視員に常に監視され、トイレの時でもドアの前に監視員が待っている状況だったという。また、男性は今後も拘束される日本人が増えるだけでなく、中国を危険な国だと認識する必要性を訴えている。

2019年にも、中国近代史を専門とする北海道大学の教授が日本へ帰国直前に北京の空港で拘束され、広州市で拘束された大手商社の40代の日本人男性がスパイ容疑で懲役3年の判決を受けるなど同様のケースがみられ、2021年にもスパイ容疑で拘束されていた日本人男性2人の懲役刑が確定した。スパイ容疑で逮捕された日本人の多くのケースで懲役刑の判決が出ている。

この傾向は今後も変わらないどころか、習近平政権は国内の権力基盤を固めるため2014年の反スパイ法や国家安全法など監視の目を強化しており、今後の日中関係の悪化で邦人拘束に歯止めが掛からなくなる恐れもある。習3期目ではこういったリスクを現実的に考える必要がある。

image by: Alexander Khitrov / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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