ヒトラーと日本は「メンター」の言うことを聞かずに戦争で負けた

BERLIN, GERMANY - OCT 1, 2017: Adolf Hitler, the leader of the Nazi Party who initiated World War II in Europe, Madame Tussauds Berlin wax museum.
 

ヒトラーの侵略を正当化させた「生存圏理論」とは?

最近日本でも「地政学」が流行っています。しかし、少し前まで、地政学は「危険な学問」「禁断の学問」などと呼ばれていました。なぜでしょうか?大きな理由の一つは、ハウスホーファーの「生存圏理論」をヒトラーが採用し、「侵略を正当化する理論」として使ったからです。

では、「生存圏理論」とはどういう理論なのでしょうか?生存圏とは、国家が生存(=自給自足)するために、必要な地域のことです。人口が増えたり、国力が増せば、必要な生存圏も大きくなる。その時、国家が生存圏を確保するために、国境を拡張することは、「国家の権利である」と主張したのです。この考え方だと、「生存圏を確保するために他国を攻めることは『権利である』」ことになり、他国への侵略は肯定されることになります。

わかりやすくするために、例を挙げてみましょう。日本のエネルギー自給率は、約12%だそうです。全然自給できていない。ハウスホーファー的にいうと、「生存圏を確保できていない」状態。それで、日本がエネルギーを自給自足できる状態をつくるためにサウジアラビアを侵略する。「これは国家の権利だ!」とハウスホーファーは主張したのです。「かなりヤバイ思想」であることがわかるでしょう。

ヒトラーは、どこでこの話を聞いたのでしょうか?1923年11月、ヒトラーはクーデターを画策し、いわゆるミュンヘン一揆を起こしました。ところが、一揆は半日で鎮圧され、ヒトラーは逮捕されます。1924年6月から11月の間、ハウスホーファーは、刑務所に通い、ヒトラーとヘスに、地政学、戦争学などを伝授したのです。

ヒトラーは1925年、『我が闘争』を出版。そこには、ハウスホーファーの影響が見て取れます。

<“民族主義的国家の外交政策は、一方では国民の数およびその増加と他方では領土の大きさおよびその資源との間に健全で、生存可能であり、また自然的でもある関係を作り出すことにより、国家を通じて総括される人種の存在をこの遊星上で保証すべきものである”

“この地上でじゅうぶんな大きさの区域を占めることだけが、一民族に生存の自由を保証しうるのである”
(『我が闘争(下)』378p)>

ヒトラーは、東欧は「ドイツの生存圏である」と主張。東欧に移住している、スラブ系諸民族を排除し、ドイツの領土にすべきと主張しました。ヒトラーは後に、大陸欧州のほとんどの国に侵攻し、勝利をおさめました(一時的でしたが)。

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