日本についてもハウスホーファーの「大戦略眼」は正しかった
ドイツについて、ハウスホーファーの「大戦略観は正しかった」という話をしました。
実をいうと、彼は日本についても正しいアドバイスをしていたことがわかっています。ハウスホーファーは、
日本の伸長意思に、明瞭なる二つの方向ー北進傾向と南進傾向
(復刻版『ハウスホーファーの太平洋地政学解説』佐藤壮一郎 84p)
があることを知っていました。では、彼は、「北進」「南進」どちらを勧めていたのでしょうか?これは、「南進」を勧めていたのです。
ハウスホーファーは、日本の北進は、現在の状態をもって限界とすることが賢明である
(同上89p)
「現在の状態をもって」というのは、要するに「満州支配で止まれ」ということです。
日本の民族発展は、当然、南進の方向を基礎とすべしとするものである
(同上89p)
ところが、日本もヒトラー同様、ハウスホーファーの願いとは違う方向に向かいます。1937年にはじまった日中戦争は、ハウスホーファーを幻滅させました。ハウスホーファーは、日本が満洲と経済ブロックを組むのはかまわない。しかし、中国と戦争を開始したことは愚かだと考えていたのです。大の親日家だったハウスホーファーは、在日ドイツ大使館経由で、日本政府が方針を改めるよう働きかけていたが、成功しませんでした。ちなみに満州事変の首謀者・石原莞爾も、ハウスホーファー同様、中国と戦争をはじめたのは愚かと考えていました。
というわけで、今回は、「ヒトラーのメンター1」でした。もちろん、私は、ハウスホーファーの「生存圏理論」を肯定しません。ですが、彼が日本とヒトラーに対して「大戦略的」に「勝てるアドバイスをした」ことは、間違いありません。ですから、歴史、地政学、戦略に興味のある方は、この人物のことを学んでみてはいかがでしょうか?
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年11月14日号より一部抜粋)
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