国に泣きつくトヨタの下劣。EV化からの「脱落」が示す日本産業界の衰退

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もはや世界の潮流となった自動車の電動化。しかし主要国の中で日本のみが、その流れに大きく乗り遅れていることは否めないようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、トヨタ自動車の社長らが政府に対して行った「陳情」がいかに浅ましく恥ずかしいものであったかを解説するとともに、彼らに対する岸田首相の対応の情けなさを批判。その上で、官民共に劣化した日本のさらなる衰退は必至との見方を記しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年11月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

世界のEV化の流れから半ば脱落したトヨタ/戦略不在で衰退する日本の象徴

やや旧聞に属するが、11月2日に豊田章男=トヨタ自動車社長/日本自動車工業会会長、有馬浩二=デンソー社長/日本自動車部品工業会会長が十倉雅和=経団連会長と共に首相官邸を訪れて岸田文雄首相に会い、脱炭素化や電動(EV)化など変革期にある自動車業界の競争力を高めるため「国の財源をどう使うか、税制の抜本改革を含めて支援をお願いした。議論はスタートで、会合は今後も不定期で開く」(豊田の会合後の記者会見)という。

そもそも「首相が特定の業界を相手に協議の場を設けるのは異例」(毎日11月2日付)で、そうまでして自動車業界は政治に一体何を求めているのか、どの報道を見てもはっきりしないが、この毎日の記事の中にヒントが隠されていた。

恥ずかしいトヨタの陳情

「業界内ではガソリン車に代わってEVの普及が急速に進めば、部品など下請け企業も含めて多くの雇用が失われる懸念が高まっている。一方、政府は2035年までに新車を全てEVなどの電動車にする方針。このため業界側は政府との連携を深め、有利な規制や税制整備などの支援を取り付けたい思惑もありそうだ」

これ、分かりますか?世界のEV化の急速な進展の中でトヨタはじめ日本は致命的とも言える酷い遅れをとっていて、このままでは「下請け企業も含めて多くの雇用が失われる懸念」があるので、政府が余り急速にEV化を進めないようにして貰いたいし、その懸念が現実化した場合は「国の財源」や税制優遇で救済して欲しいという陳情に行ったのだと判る。

日本を代表する製造業大企業だと思われているトヨタが、どうにもならない自分の経営戦略の失敗を税金で尻拭いしてくれるよう願い出るという浅ましくも恥ずかしい姿で、まさに日本産業界の劣化を曝け出していると言える。対する岸田も情けなくて、毎日記事による限り「自動車産業はわが国経済、雇用の大黒柱だ。脱炭素化などの転換点を迎える中で、官民が連携し、さらなる成長にチャレンジしていく必要がある」と寝惚けたことを言っている。本当なら「あなた方、雁首揃えて何を言いに来たんですか。トヨタの内部留保は24兆1,042億円、ホンダは8兆9,013億円(20年度末)。それを吐き出して派遣社員、非正規社員も含めた史上空前の賃上げをやってくれないと、私の『新しい資本主義』は始まらないんですよ」と叱りつけるのでなければならない。

経済も政治も劣化して、日本の将来像を切り開くための戦略などどこにもないままお互いに寄りかかりながら、衰退に向かうのである。

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