国に泣きつくトヨタの下劣。EV化からの「脱落」が示す日本産業界の衰退

 

豊田社長は「EV嫌い」?!

実際、日本のEV化の立ち遅れは酷い。世界の主要11カ国と北欧3カ国の自動車販売台数に占めるEVとハイブリッド車(HV)の割合を見ると、2020年8月にはEVは4.3%であったのが2年後の22年8月には17.9%と急伸し、HVは同じく3.4%から4.0%ほとんど横這い。この中で日本は、同じ期間にEVは0.27%から2.66%、HVは0.28%から1.22%と、ほとんど別世界を歩んでいるかのようである。

こんなことになった最大の原因は、古賀茂明が何度も指摘しているように「米国ではEV拡大にはまだ時間がかかると見て、HVでしばらく凌ごうと考えたトヨタやホンダの読みは完全に外れた」(週刊文春連載コラム11月4日号)、「EVで日本の自動車メーカーが世界に遅れをとったことはよく知られるようになった。トヨタの派手なCMは、同社がEV化の先端企業であるかのような印象を与えているが、世界では米テスラが年間100万台超のペースでEV生産を伸ばし、それを中国勢が急追する中、トヨタのEV販売は年間数万台で存在感はゼロ。しかも、同社の旗艦EV、bZ4Xは発売直後にお粗末な欠陥が発覚して全車リコールとなった。今後の見通しは暗い」(同上11月25日号)というにある。

会員制月刊誌『選択」11月号の「世界を敵に回す異様な言動/トヨタ章男が『反EV』でご乱心」と題した記事が指摘しているのは正しくて、豊田は「EV嫌い」なのである。それは彼の幼い頃からの「エンジンの爆音」大好きの裏返しで、10月にオープンしたモータースポーツ博物館併設の「富士スピードウェイホテル」のお披露目式のために彼が配ったメッセージには、こんなことが書いてある。

「1966年5月3日、初めて富士スピードウェイで日本グランプリ決勝レースが行われた日です。56年前のその日、ちょうど10歳の誕生日を迎えた私は父に連れられ、富士のパドックにいました。エンジンの爆音やファンの歓声は、なんだか興奮するプレゼントだったということをよく覚えています。クルマを前にした“おじさんたち”は、ものすごく真剣だったり、でも、とても楽しそうだったり、そんなことも思い出されます。こんな原体験が私を“クルマ大好きおじさん”“モータースポーツ大好きおじさん”のモリゾウに育ててくれたのだと思います」

モリゾウは豊田が1人の車好きとしてメディアなどに登場する時などに用いるニックネームである。

ご乱心でバイデンにも叛逆

彼にとって車はやっぱりガソリンエンジンなのであり、ユーチューブのトヨタタイムズでは好きな車を聞かれて「もうねー、うるさくて、ガソリン臭くて、そんなクルマが大好きですね」と答える場面も出てくる。個人の趣味でガソリン車にこだわるのは勝手だが、それを会社の方針に押し付けるばかりか、社会全体のEV化を少しでも先延ばしさせ、その間に半ばガソリン車であるHVを出来るだけ長く売っていこうと考えるのは、「選択』のいうように「ご乱心」としか言いようがない。

彼は9月下旬にラスベガスで開いた会議では、「EVの普及はメディアの予想よりも時間がかかる」と語り、カリフォルニア州が2035年までにガソリン車の新車販売を事実上禁止することを決めたことに対しても、「実現は難しい」といちゃもんを付けた。

バイデン米大統領はその直前にデトロイトのモーターショーでの演説で、EV生産が国内に回帰していることを歓迎しつつ、それをさらに促すため同政権がEV普及に向けて1,350億ドル(約20兆円)を拠出していること、インフラ投資雇用法の一環として、35州にEV充電器を建設するための最初の9億ドルの資金提供を承認したことを強調した。

そのバイデンに盾をつくかのように、EV化はまだまだと言っているのでは、トヨタは米国のEV市場での競争から撤退すると宣言したに等しいことになる。

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