ガン無視され不満?北朝鮮をミサイル連射に駆り立てている3つの要因

2022.11.24
 

2つ目は、上記と関連するが、ウクライナへ侵攻したロシアの存在だ。世界の経済相互依存が深化する今日、リスクを冒してまで国家が国家を侵略するということを我々は軽視していた。しかし、実際ロシアは侵攻したのだが、こういった既成事実は他の悲劇を生む恐れがある。要は、軍事侵攻したって米国は介入しない、国連は何もできないという意識が世界で強まれば、第2のウクライナ、第3のウクライナが生まれる可能性もある。北朝鮮による暴走の背景には、こういったロシアの影響もあると考えられる。

ちなみに、安全保障専門家の間では、バイデン大統領がウクライナへの米軍派遣を事前に否定したことが、プーチン大統領による侵攻決断を後押しする結果になったとの指摘も聞かれる。

3つ目は、中国の存在だ。これも1つ目と関連するが、米中対立など世界のパワーバランスが変化する中、北朝鮮にとって“最大の擁護者”である中国が世界の大国になりつつあることは、金氏にとっては極めて良い環境といえる。ミサイル発射を繰り返したとしても、中国外務省はいつも北朝鮮非難を避け、国連では欧米による北朝鮮非難決議の採択を中国が妨害しており、こういった事実は金氏にとって安心材料となる。そうなれば、ミサイル発射を繰り返したとしてもそれほどダメージはないと判断できるようになり、大国化する中国の存在感は極めて北朝鮮にとって大きい。

一方、北朝鮮はこうとも考えているだろう。すなわち、北朝鮮としては、中国にとって自らが“何をするか分からない”国であることが立場上良く、たとえば、1つに核実験をちらつかせることで中国からさらなる経済援助を引き出したい思惑がある。中国と北朝鮮の国力差は歴然だが、両国は国境を接しており、仮に核実験を行ったり、政権が不安定化して難民が大量発生したりすれば、中国は多大な重荷を背負うことになる。

要は、中国にとって北朝鮮は“小さな爆弾”であり、爆破しないよう注意しながら対応する相手なのだ。よって、ミサイル発射を繰り返しても、中国には北朝鮮を毎回強く非難できない事情もここから見えてくる。

image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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