トロは捨てられ、カツオ一本が30万円。今とはまったく違う江戸時代の魚事情

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また、魚河岸に常駐した幕府の役人は将軍や大奥に納める鯉を確保する役目を担っていました。その為、魚河岸に入荷した鯉が不足すると武家屋敷、料理屋、民家に立ち入り、池で泳ぐ鯉を無理やり捕っていったそうです。不確かですが、武家屋敷には鳥見役同様、探索目的で立ち入った可能性もあります。

江戸時代ならではの役職ですね。

江戸時代の魚事情について記します。

ご存じの読者も多いでしょうが、江戸時代、鮪、特にトロは捨てられていました。鮪という魚自体が下魚とされていたのです。今日から見ると、トロを捨てるとは勿体ないですね。古典落語の、「三方一両損」では、鰯の塩焼きを肴に酒を飲んでいる男を、あんなぎとぎとした脂っこいもので酒を飲むなんて江戸っ子じゃねえ、と蔑む男が登場します。江戸っ子から見れば鮪のトロなんぞは脂っこくて口にできなかったのでしょう。

同じく古典落語の、「目黒のさんま」では目黒の農家で生まれて初めてさんまの塩焼きを食べた殿さま、その美味さに仰天、藩邸でも食べたいと言いますが、さんまなどという下魚が殿さまの食膳に供されることはありません。それでもたっての願いで、出されたさんまは脂が抜かれたごくあっさりとしたものでした。江戸っ子に限らず、武士の間でも脂っこい食べ物は嫌われていたのかもしれません。

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1961年岐阜県岐阜市に生まれる。法政大学経営学部卒。会社員の頃から小説を執筆、2007年より文筆業に専念し時代小説を中心に著作は二百冊を超える。歴史時代家集団、「操觚の会」に所属。「居眠り同心影御用」(二見時代小説文庫)「佃島用心棒日誌」(角川文庫)で第六回歴史時代作家クラブシリーズ賞受賞、「うつけ世に立つ 岐阜信長譜」(徳間書店)が第23回中山義秀文学賞の最終候補となる。現代物にも活動の幅を広げ、「覆面刑事貫太郎」(実業之日本社文庫)「労働Gメン草薙満」(徳間文庫)「D6犯罪予防捜査チーム」(光文社文庫)を上梓。ビジネス本も手がけ、「人生!逆転図鑑」(秀和システム)を2020年11月に刊行。 日本文藝家協会評議員、歴史時代作家集団 操弧の会 副長、三浦誠衛流居合道四段。 「このミステリーがすごい」(宝島社)に、ミステリー中毒の時代小説家と名乗って投票している。

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