チャリティーバザーを頻繁に開催する理由
善意を前面に出す手口は、これだけではありません。私がいたところでは、チャリティーバザーを頻繁にしていました。
なぜ、それだけ頻繁にできるのかといえば、献身(出家)する信者が次々に出ていたからです。彼らは身も心も神に捧げ、ホームと呼ばれる教団施設に住み込み、伝道と経済(お金集め)の活動をします。衣服などの最低限の持ち物以外は教義上、神のもとに手放さなければなりません。それで、持っている家具や机など、金目になりそうなものは、すべてバザーに出されてしまうわけです。
また、献身までしない信者であっても、教義に傾倒すればするほど、自分の財産は教団に捧げなければならない状況になります。とにかく、バザーの商品にはこと欠かないのです。入信した学生時代、私もなけなしのお金で買ったばかりの6万~7万円もする望遠鏡をバザーに捧げました。
当時、霊感商法=統一教会という悪評が立っていましたので、その名を出したチャリティーバザーはできませんでした。それで、ダミー団体を名乗り、統一教会だと知られないように行っていました。しかし、いまは世界平和統一家庭連合の名を出して堂々とバザーを行い、社会福祉協議会などに寄付を行っています。
つまり、バザーに来場した方が、ここが霊感商法を行っていた旧統一教会であることに気づかないまま、お金を出したのではないかと思います。2015年の「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」への名称変更の効果は、こうしたところにも表れているといえます。
当時から言われていたのは、
「チャリティーバザーなんだから、少々値段が高くても、来場者は商品を買っていく。だから、値段は下げるな」
です。私がいたところでは、売上目標を100万円にして、数十万円の利益が出ることはざらでした。その後、内部の会議に参加したことがありますが、やはり、そのお金のほとんどは教団への献金や、信者のホーム代や、借金の返済にあてるとの報告がなされていました。
そのころも、チャリティーバザーの売上の一部である数万円は自治体に寄付をすることになっていました。今回、多くの社会福祉協議会などが受けた寄付に近い金額です。何を目的にしているかいえば、募金をした際に受け取る「受領書(領収書)」や「表彰状」です。
私の信者時代、かなりの頻度で教団はバザーを行い、たびたび寄付を行っていたので、会場には自治体からの感謝の表彰状などが飾られています。それを見た来場者は、ここがしっかりしたボランティア団体だと思ったことでしょう。それで、口コミで来場者が増え、売上が上がるようになっていました。
今回、取材した各社会福祉協議会も、寄付を受け取ったときには領収書や受領書を渡しているということです。それを次のバザーの際に見せ、市区町村からお墨つきを得た信頼ある団体のように見せているのではないかと思います。
さらに、いまは寄付したことはホームページや広報誌にも載りますので、旧統一教会から名前を変えた「世界平和統一家庭連合」がすばらしい慈善活動をしている団体であるとアピールすることも可能なわけです。こうしたことをきっかけに教団に誘われることは十分にありえます。
私がいたところでは、多額のお金をバザーで集めておきながら、寄付は数万円ほどと微々たる金額しかしていません。そのほとんどが献金などに回されています。時に献金のノルマが厳しいと一銭も市区町村に募金しないこともあり、そのときは、まるまる教団の収益となります。
しかし、こうしたお金の流れは、外部の人にはわからないことです。
※この記事は、多田文明さん最新刊『信じる者は、ダマされる。元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)より本文の一部を抜粋したものです。元統一教会信者として「騙しの手口」や詐欺の実態を知り尽くした多田さんの発行するメルマガ『詐欺・悪質商法ジャーナリスト・多田文明が見てきた、口外禁止の「騙し、騙されの世界」』は、初月無料でお読みいただけます。この機会にぜひご登録ください。
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image by: B.Wisp, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で