安倍元首相“国葬”出席 ミャンマー軍事政権に「お墨付き与えた」エリザベス女王の国葬、イギリス「招待せず」
一方、安倍晋三元首相の国葬にミャンマー駐日大使が参列する様子をミャンマーの外務省が9月27日に写真付きでSNS上にアップ。しかし、人権団体などは、
「国軍が実権を握る国の参列は、軍事政権にお墨付きを与える行為だ」(*6)
とした。
ただ、そもそも日本は政府として、ミャンマーの軍事政権を「政府承認」していない。外務省の見解は、
「外交関係を有する国に対してはすべて国葬の通知を出しており、ミャンマーにも出しました。だからと言って、政府承認をしたわけではなく、ミャンマーに対する姿勢が変わることもありません」(南東アジア第1課)(*7)
実際、安倍氏の国葬について日本政府は、外交関係を結ぶすべての国に開催を通知。ミャンマーなど特定の国が除外しなかったという。ウクライナへの侵攻を続けるロシアにも通知している。
一方、英メディアによると、9月に開かれたエリザベス女王の国葬には、原則としてイギリスと外交関係を結ぶ国を招待しているものの、しかしロシア、ミャンマー、シリアなどは招かれなかった(*8)。
蠢く“親日利権” 「親日」のためにミャンマー市民を犠牲に
日本政府も、先進国の一員として、“一応は”クーデターを批判している。しかし、ミャンマーに対する最大の援助国は日本。
そもそも、日本はミャンマーが民政に移行して以来、経済開発に深く関与してきた。
ODAの供与国として世界で最大であるとともに、日本はミャンマーの民主化の進捗を監視することを条件に、2,000億円もの債務を帳消しした(*9)。日本政府は、その義務を怠った。
ミャンマー社会に“食い込んでいる”組織として日本財団がある。ハンセン病の制圧から小学校の建設にいたるまで、ミャンマーにおいて保健・教育に力点を置いた活動を、多数派のビルマ人のみならず、山岳部の少数民族地域においても実施。
ところが、いつまでたってもミャンマーに平和は訪れない。
そもそも日本財団と統一教会には、少なからず因縁がある。1958年に統一教会の宣教師がはじめて日本に上陸した時に、密入国で逮捕されている。
これを庇護したのが日本船舶振興会(現在の日本財団)の笹川良一氏であった。
筆者は“親日利権”があると推察する。“親日国”とされるミャンマーとトルコ政府に反発するクルド人が多数を占める難民をなかなか受け入れたがらないには、その代表例だ。
■引用・参考文献
(*1)テレ朝news「ミャンマー情勢「危機長期化に懸念」 ASEAN議長声明」
(*2)テレ朝news
(*3)「解放の久保田徹さん帰国 『言い表せないほど感謝』」時事ドットコムニュース 2022年11月18日
(*4)飯沼智、松尾恵輔、北井元気「【詳しく】クーデター後のミャンマーはいま スー・チー氏は?」NHK NEWS WEB 2022年2月1日
(*5)飯沼智、松尾恵輔、北井元気 2022年2月1日
(*6)野平悠一「ミャンマー軍事政権に『お墨付き与えた』 国葬招待の日本政府へ批判」朝日新聞デジタル 2022年9月28日
(*7)「ミャンマー軍事政権を安倍氏国葬に“招待”…『民主主義を守り抜く』どころか暴力にお墨付き」日刊ゲンダイDIOGITAL 2022年9月22日
(*8)野平悠一 2022年9月28日
(*9)「ミャンマー危機における日本の責任を考える」ビデオニュース・ドットコム 2021年4月10日
(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年11月26日号より一部抜粋・文中一部敬称略)
この記事の著者・伊東森さんのメルマガ
image by: Maung Nyan / Shutterstock.com