統一教会と民族派、反米と親米。日本会議も“一枚岩”ではない
日本会議における最大の同床異夢は、この統一教会と民族派の野合にある。共に家父長制の倫理によって世界を支配しようとするが、民族派は天皇、統一教会は文鮮明夫妻が核となる。この点で、全く異なっている。
もう一つ、忘れてならない異夢は、独立派と、親米派の問題である。元々、民族派は、反ヤルタ・ポツダム体制が表看板であった。すなわち、戦後の国連常任理事5大国を中心とする世界秩序への挑戦である。谷口雅春も、究極は日米戦争をもう一度行い、米国に勝利し、アジア的価値観による世界支配を夢見ていた。三島由紀夫の楯の会に淵源する一水会も、反YP体制が合言葉であった。
しかし、戦後一貫して反共産主義を貫いた笹川良一や児玉誉士夫、岸信介等がCIAと手を組んでいたというのは既に知られた事実である。手を組んだのは一時の方便であったかもしれないが、彼らに連なる現在の日本の保守勢力は、基本的に日米同盟の堅持を政策の第一目標に掲げている。そして一方では、民主主義の米国が眉を顰めるような歴史修正主義や儒教的価値観の政策、家族主義、反個人主義、夫婦別姓反対(事実としての夫婦同姓は欧米的な価値観であり、儒教は夫婦別姓であるが、日本では、夫婦同姓が家族主義の象徴として重要視されている)、外国人参政権反対、LGBT蔑視、女系天皇反対などが主張されている。これ等は反民主主義的な思想であるが、それには気づかず、自由民主党と名乗っている。
儒教的「権威主義」に染まり切った日本の民族派たち
つまり、民族派とか保守派と言った人々もまた、おそろしく同床異夢の中で生きている。これは、中国、朝鮮、日本の人々は民主主義の根幹である個人主義を理解できず、儒教というアジア的な権威主義の価値観に染まりきっているということである。習近平の儒教的社会(権威)主義も、北朝鮮の主体思想も、神社本庁の天皇を中心とする家父長制国家も、全てここから発している。
冷静に考えてみよう。国連中心の平和主義は戦後一貫して世界中に支持されてきた。今回のロシアによるウクライナ侵略が世界の人々に支持されないのは、力による国境変更はそれに反するからだ。イラクによるクウェート侵略が支持されなかったことも同様である。したがって、世界は、YP体制(戦後体制)を前提として進んでいかざるを得ない。今回のウクライナ侵略により、ロシアの国際的地位の低下は免れない。よって今後、国連の常任理事国体制は変化するであろう。今、盛んに米国は中国を刺激しているが、中国がその気になって台湾や尖閣、沖縄を攻撃すれば、ロシアと同様な目に遭うことになる。その意味では、世界は相変わらず米国主導で動いており、権威主義の価値観が民主主義のそれにとって変わることはないように思われる。
【関連】日本社会を蝕む「朝鮮民族主義」とは何か?創建1250年の神社宮司が斬る旧統一教会問題と「日本人も知らない神社の話」
補足すれば、御皇室はこの辺りをよく理解されている。A級戦犯合祀以来、絶えて天皇陛下の靖国参拝が行われなくなったのは、A級戦犯の英雄化はYP体制の否定に繋がるからである。この辺の事情が靖国神社には理解できないのである。自由民主党の政治家たちも、はっきりと同床異夢の夢から醒めて、真の自由と民主主義を主張する政党となり、文鮮明や儒教の影響下から脱するべきである。
記事提供:清州山王宮 日吉神社 三輪隆裕 宮司のブログ:http://hiyoshikami.jp/hiyoshiblog/
image by: User:Sun Myung Moon, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で