韓国にナメられた日本の「売国」政策。統一教会問題が炙り出した安倍元首相ら保守派の土下座外交のツケ

2022.12.08
 

「土下座外交」は、主に「リベラル派」とされる政治家が行ってきた。そして、前述の安倍元首相のような「保守派」の政治家がそれを止めようとしてきたとされている。だが、私は保守派が「土下座外交」を止めようとしてきたという見方には懐疑的だ。

私は、以前から安倍元首相を中心とする「保守派」の政治家の「二面性」と「内弁慶」体質を批判してきたからだ。保守派は、従軍慰安婦問題などに関して、日本国内で「声高な主張」を繰り広げる一方、彼らの主張を加害国に対してぶつける努力を怠ってきた。

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韓国側の主張が世界に広がる中、保守派はこれまで外国の雑誌や新聞に論文を掲載することや、外国の政治家やマスコミを説得するなど、日本の理解者を増やす努力を怠っていた。否、保守派は海外の批判から目を背けて逃げ回ってきたのだ。

保守派は、国内で隣国に罵声を浴びせるかのような強気な発言を繰り返し、海外の勢力から「国益」を守るとか、「自主防衛」とか主張してきた。だが、彼らは一歩でも海外に出れば何も言えなくなるのだ。そればかりか、日本の国益を売り渡すようなリップサービスを繰り返してきた。長年にわたる保守派の「内弁慶」な姿勢はまさに、相手国の要求を無条件でのみ続ける「土下座外交」そのものなのではないだろうか。

そして、このような保守派の「土下座外交」の存在を垣間見せてくれるような事実が次々と明らかになっているのだ。安倍派を中心とする自民党「保守派」の政治家と、旧統一教会の密接な関係である。

衝撃的なのは、旧統一教会が「韓国を36年間植民地支配した日本は『サタンの国』であり、贖罪(しょくざい)のために日本人は寄付をしなければならない」という協議を説いていたことだ。つまり「反日」と呼んでも過言ではない教義を説いていた教団から、「愛国」を訴えてきた保守派の政治家が票をもらっていたということなのだ。

私は、旧統一教会と政治の問題は、日本の保守派が、国内では大きな顔をしながら、外国勢力に対してはまるで弱腰で謝罪を繰り返す「二面性」「内弁慶体質」であることを証明していると考えている。

このように考えると、「元慰安婦をめぐる日韓合意」を、韓国側が一方的に破ったことに対する、安倍首相(当時)の強硬な姿勢は、果たして正しかったのかと疑いたくなる。なぜなら、それは韓国側からするとあまりに唐突な強硬姿勢に見えただろうからだ。

安倍首相や保守派は、日本国内で表面的に強気な姿勢を見せていながら、実は韓国側に「日本はサタンの国」というような考え方を受け入れるような「リップサービス」をしていたかもしれないのだ。それならば、韓国が慰安婦合意を反故にしても、安倍首相は受け入れると楽観的に考えても不思議ではない。だから、唐突な安倍首相の強硬姿勢に韓国は驚き、怒り狂ってしまったのではないか。

旧統一教会と政治の問題は、選挙活動を中心とした国会議員、地方議員、首長と教団の様々な結びつきに焦点が当たりがちだ。だが、真に重要なのは、旧統一教会との関係から垣間見えた、保守派の政治家の韓国に対する本当の振る舞いだ。

もし、「土下座外交」を繰り返し、それが韓国を誤解させて、日本の国益を損ねているのであれば、保守派の政治家は断罪されるべきだからである。

image by: Amankgupta / Shutterstock.com

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

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