台湾有事どころじゃない。2023年は日本列島が昨年より危機的状況に陥る2つの理由

2023.01.25
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昨年は、極度な緊張状態が続いた台湾情勢、そしてロシアとウクライナによる紛争、さらに北朝鮮からのミサイル通過と、日本周辺で「有事」の可能性を示唆する出来事が相次ぎました。2023年、こうした日本周辺の「安全保障」の状況はどのように推移していくのでしょうか。この状況について厳しい見方をするのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は、今年は昨年以上に日本周辺の危険度が増すとして、その理由を示すとともに、今後起こりうる状況をさまざまな動きから予測しています。

2023年。日本を取り巻く安全保障は、間違いなく「昨年以上に厳しい状況」になる

昨年は、ロシアによるウクライナ侵攻で国際政治に大きな激震が走り、台湾情勢を巡っては、8月のペロシ米下院議長の台湾訪問によって中国軍がこれまでにない規模の軍事演習を実施するなど、世界は大きな変動期に入った。しかし、今年は昨年以上に世界情勢は荒れる可能性があり、日本を取り巻く安全保障環境はさらに厳しくなるだろう。筆者がそう判断する理由は主に2つある。

1つが、その台湾情勢だ。今年、台湾は選挙イヤーとなる。ちょうど1年後の2024年1月、台湾では次期指導者を選ぶ総統選挙が実施されるが、現在2期目の蔡英文氏であり、次回の総統選挙に出馬することはない。よって、台湾有事を巡って今後最大のポイントになるのは、蔡英文氏の政策理念や方向性を継承する後継者が勝利するのか、もしくは中国への理解を示す親中派が勝利するのかだ。当然ながら、今後の選挙戦で親中派がリードし、来年の選挙でも親中派が勝利するならば、習氏もリスクが高い武力行使という手段を踏まず、誰もが恐れる台湾侵攻というシナリオは回避されるであろう。しかし、独立志向を掲げ、米国を中心とする欧米諸国との関係を強化する蔡英文氏の後継者が選挙戦を今年リードしていけば、中国は軍事演習やサイバー攻撃、偽情報の流布、経済制裁などあらゆる手段で台湾への圧力を強めることだろう。そして、来年1月の選挙で蔡英文氏の後継者が勝利すれば、2024年、台湾有事発生のリスクは一気に高まることが予想される。

対中は「対立姿勢」を維持。下半期に緊迫化する台湾情勢

しかし、台湾政府は昨年末、兵役義務の期間を現行の4ヶ月から1年に延長することを決定し、台湾社会では昨年以降、有事を想定した市民による自発的な退避訓練が活発化し、有事を現実問題として考える風潮が強くなっている。また、台湾市民の間では若い世代を中心に台湾人としてのアイデンティティが支配的で、台湾が防衛面で依存する米国と中国の対立は台湾問題で最も火花が散っており、今日、台湾としては米国に対して親中的な姿勢を見せづらくなっている。要は、民進党や国民党を問わず、台湾指導者は既存の蔡英文政権のスタンスを継続する必要性に迫られつつあり、来年1月の総統選挙の結果云々にとらわれず、次期政権もこれまで同様の対中政策になる可能性が高い。

そうなれば、台湾統一をノルマに定める習政権の台湾政策はいっそう厳しさを増すことは間違いない。3期目が決定した昨年秋の共産党大会の際、北京や上海などでは「独裁者習近平はやめろ」などと書かれた横断幕が発見されるなど、反政権的な動きが見られた。また、その後の反ゼロコロナを巡る動きは、中国人民の中で反政権的な不満が積もりに積もっていることが露になった。要は、“反習近平”を最も恐れる習政権3期目は、そういった国民の不満や怒りを交わすため、和らげるためにも対外的には強気の姿勢を貫く可能性が高く、そうなれば米中間で最重要イシューになっている台湾問題では、強硬姿勢になることは想像に難くない。台湾問題は、昨年以上に今年、もっといえば今年下半期はさらに緊迫化する恐れがあろう。

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