台湾有事どころじゃない。2023年は日本列島が昨年より危機的状況に陥る2つの理由

2023.01.25
 

「朝鮮半島情勢」は、昨年以上に緊張走る恐れ

また、台湾情勢にばかり注目が集まるが、実は朝鮮半島を巡っても今年は昨年以上に緊張が走る恐れがある。

昨年、北朝鮮は異例のペースでミサイル発射を繰り返したが、その背景には、昨年5月に誕生した韓国ユンの対北政策がある。ユン政権は前政権の宥和政策から一転し、米国や日本と結束を強化することで北朝鮮に圧力を掛けている。米軍と韓国軍の合同軍事演習も今年5月以降に活発化しており、北朝鮮はそれに強く反発している。北朝鮮は昨年、米本土へ到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICMB)発射も実施した。今年に入っても、たとえば韓国の国防相は1月11日、北朝鮮による核兵器使用を想定した米韓合同の机上演習「拡大抑止手段運営演習(TTX)」を2月に米国で行う方針を明らかにした。TTXは2021年9月以降実施されていなかったが、両国は昨年11月に北朝鮮の脅威が増しているとしてTTXを毎年実施することで合意した。韓国軍は昨年末、北朝鮮が1月中旬以上に核実験を行う恐れがあるとも指摘した。

日本では台湾情勢に注目が集まっているが、今年は朝鮮半島情勢を巡っても2017年以降で最も緊張が高まっている。2017年、トランプ政権が北朝鮮へ圧力をかけ、軍事衝突のリスクが現実問題となり、日本国内でも在韓邦人の退避・安全が大きな問題になった。バイデン政権は北朝鮮を事実上この2年間相手にしておらず、その政権は日本や韓国と対北で結束することが今日極めて簡単な状況にある。しかし、それは北朝鮮が最も嫌がる環境であり、今年は2017年以来、北朝鮮を巡る緊張が緊迫化する恐れがある。

台湾有事、台湾有事ばかりではない。これに朝鮮半島有事が加わった際、日本を取り巻く安全保障環境は危機に陥る。今年は2大有事になる可能性を含め、日本は邦人の安全を如何に進めるかを検討する必要がある。

image by: Carlos Huang / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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