日本など敵にもならず。中国が安保3文書改定に大きく反応せぬ訳

 

さて、その上で今回のG7メンバー国をめぐった岸田外交だが、そのハイライトがワシントンでの日米首脳会談であることは言うまでもない。

年末に閣議決定された「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」、いわゆる安保3文書改定を受けた流れだ。

安保3文書改訂は、日本が敵基地への反撃能力の保有を明記したという特徴を持ち、中国を強く意識した日米同盟の強化だ。

日米同盟の「現代化」とも呼ばれるこの動きで注目されるのは、日本がアメリカの「統合抑止」に加わる点だ。日本のメディアはそろって安保政策の歴史的転換だと興奮気味に伝えた。

そうした報道のボルテージに比べると、中国政府の反発はいまのところ不思議なほど抑制的だ。

かつて憲法改正の「け」の字でも口にしようものなら猛烈な剣幕で批判し、国内でデモも起きていた。

それなのにいまや形式的にも実態でも「専守防衛を葬り去った」と中国側がとらえる動きが続いているにもかかわらず、この程度の反応で済んでいるのは奇跡という他ない。

いったいなぜなのだろうか。

考えられる理由はいろいろあるが、なかでも大きいのは、中国から見た安全保障の環境はそれほど大きく変わっていない点だ。

そもそも中国は、朝鮮戦争とベトナム戦争を戦った相手として、アメリカへの警戒を怠ったことはない。台湾を統一するためにも、アメリカは越えなければならない高い壁である。

つまり、アメリカという巨大な潜在「敵」と対峙するなかで、日本という変数はそれほど大きくないということだ。さらに、アメリカが中国との間に緊張を高めようとすれば、日本がそこに組み込まれないという予測は、そもそも成り立たないのであり、その意味ではむしろより分かりやすい形になったと言えるかもしれないのだ──(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年1月22日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: 首相官邸

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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