ロシアと同じ「危険な国」扱い。なぜ中国はダボス会議から締め出されたのか?

 

変化するグローバリストと中国の関係

ダボス会議は、いわゆる「グローバリストのエリートたちの集まり」といえるでしょう。グローバリストとナショナリストのプーチンは、2003年以降、ほとんどの期間険悪でした。しかし、ロシアの新興財閥は、グローバリストと親和性が高かったので排除されていなかった。ですが、ウクライナ侵攻のせいで、さすがに今年は排除されています。

一方、中国は、どうなのでしょうか?鄧小平、江沢民、胡錦涛は、欧米のグローバリストと協力して、中国を発展させてきました。世界一の人口を抱え、貧しかった中国。この国を発展させることは、グローバリストが大儲けする方法だったのです。

ところが、ナショナリスト習近平が出てきて、すべてが変わってきます。この変化は、「よくしゃべるグローバリスト」ジョージ・ソロスの言葉の変遷を見るとよくわかります。彼は、06年に出版された本『世界秩序の崩壊~「自分さえよければ社会」への警鐘』の中で、アメリカと中国についての考えを明らかにしています。

ところが、ここに、皮肉にも愚かな事態が起きた。近隣の大国・中国が基本的に多極主義を受け入れ始めた矢先、アメリカ合衆国が正反対な方向へと動き、国際的な諸制度への疑念を強め、最近の国家安全保障面での難題に対して大幅に一極主義的な治療策を遂行したのである。

 

日本は、この両国の板挟みになった。

 

かたや最大のパトロンかつ保護国ながら、昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきたアメリカ。かたやその経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある中国。
(p9)

ソロスによると06年当時のアメリカは、「昨今益々世界の多くの国々との折り合いが悪くなってきた」国である。一方、中国については、「経済的繁栄を持続させ確保すべく国際的システムにおいて安定と現状維持を志向しつつある」国。

06年時点のソロスの、「米中観」は明確です。つまり、彼は、「アメリカ=悪」「中国=善」と考えていた。この評価は、2010年時点でも変わっていません。彼は2010年11月16日の「フォーリン・ポリシー」で、

アメリカから中国への、パワーと影響力の本当に驚くべき、急速な遷移があり、それはちょうど第二次世界大戦後の英国の衰退とアメリカへの覇権の移行に喩えられる。

今日、中国は活発な経済のみならず、実際に、アメリカよりもより機能的な政府を持っている」という議論を呼ぶであろう。

と語りました。つまり、彼は当時、「イギリスからアメリカに覇権が移ったように、今は、アメリカから中国に覇権が移動している」と考えていた。さらに、中国は「アメリカよりも機能的な政府を持っている」と。ですから、2010年当時であれば、「バイデンは、グローバリストだから親中」というのは正解でしょう。ところが、その後状況が変わりました。

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