「東京コレクション」が、あのパリコレのようにはなれない根本原因

Tailor's textile mannequin in clothes designer show room
 

2.マイノリティが「文化盗用」を叫ぶ

ラグジュアリーブランドは常に新たな顧客を開拓しようと努力しています。オイルダラーが世界経済を牽引した時には、中東風のコレクションを作り、ジャパンマネーがブランドを買い漁っていた時には日本的なかわいい女性像を、チャイナマネーが世界を席巻した時にはチャイナ風のコレクションを打ち出しました。

しかし、本質は西欧ファッションです。そこにエスニックの味付けをしたということです。ある意味で、パリのデザイナーが「成り金となったあなたたちの文化を認知してあげた」と言っているだけです。

現在は、その立場が逆転しています。ラグジュアリーブランドの顧客だったマイノリティの富裕層がデザイナーに対して、文化盗用を指摘するようになったのです。そもそもデザイナーがコレクションに取り上げたから価値が上がったともいえるのですが、彼らはマイノリティの文化は自分たちの所有物であり、デザイナーがそれを盗用したと主張したのです。

もし、マイノリティが自分たちの文化を元にしたブランドを立ち上げ、コレクションを発表し、それを顧客が認めれば本物です。仮に、西欧人が無視したとしても、同じマイノリティ社会の中で、その価値が認められ、ビジネスが一定の経済規模に達すればローカルブランドとして持続可能になります。

一方で、マイノリティの富裕層は世界的な価値を持つ西欧のラグジュアリーブランドが大好きです。ブランド商品は上流階級に所属するためのパスポートだと認識しています。しかし、あくまで金で買える程度のパスポートです。

マイノリティの文化を世界に認知させることは、金を積んでも実現しません。あらゆる分野、あらゆる表現手段でマイノリティのクリエイターが独自文化を表現し、西欧社会で一定の評価を勝ち取らなければ、世界の中で認知されたことにはなりません。

加えて、マイノリティ自身が自らの文化に誇りを持ち、西欧のブランドより自らのブランドを愛好し、育成することが必要です。

マイノリティの一部が文化盗用と訴えても、マイノリティの多くが西欧ブランドを支持したのでは、独自文化の存在意義も怪しくなってしまいます。文化盗用と主張するなら、西欧文化の象徴であるラグジュアリーブランドの商品を購入しないことです。西欧に認知されるか否かを気にせずに、自分たちで自分たちの文化を愛すればいいのです。

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