「東京コレクション」が、あのパリコレのようにはなれない根本原因

Tailor's textile mannequin in clothes designer show room
 

4.ASEANコレクションを協業できないか?

日本企業が海外で成功できないのは、自社の利益を追求するだけで、地元経済や地元業界に全く貢献しないことにも原因があります。海外で独立法人を設立し、代表者や主要スタッフは日本から派遣します。日本人は治安リスクのために安全な地域で固まって生活します。現地採用の社員とも積極的に交流はしません。しかも、多くは単身赴任ですから、地元の地域コミュニティやボランティア活動に参加することもありません。従って、地元の企業も地元の消費者も応援してくれません。

しかも、プロモーションには投資せず、ひたすら技術や品質を訴求します。これでは知名度は上がりません。知名度が上がらなければ売れません。

海外市場において、商品の品質やコストだけで市場に浸透するのは困難です。仮に日本製品が売れたとしても、それが地元企業の経営を圧迫していると判断されれば、地元政府は日本企業に対して様々な手段で圧力をかけるでしょう。

海外市場では、地元社会の一員として、地元に貢献することが必要です。それにより、地元政府や地元企業が応援してくれるようになります。

例えば、ASEAN諸国で地元のデザイナーや企業を巻き込んだ形でのファッションショーを開催するのはどうでしょうか。ここで重要なのは、自社製品のプロモーションとしてもショーではなく、地元のファッションを向上させるためのファッションショーということです。

日本にはデザイナーを組織化し、ファッションウイークを運営した実績があります。ファッションショーの演出から運営までを請け負う企業もあります。ファッションショーを紹介するファッションメディアもあります。

また、高度なファッションを生み出すための紡績、合繊メーカー、その他の繊維関連企業もあり、ASEAN諸国に進出している企業も少なくありません。ASEAN市場が成長することで、これらの企業は利益を上げることができます。

日本のアパレル企業やデザイナーがアジアのコレクションに参加することで、ASEAN諸国での知名度が上がります。また、地元で教育機関と連携したプログラムを実践すれば、人材育成に貢献したと評価されるでしょう。

日本の産業育成は目先の売上にこだわり、長期的な戦略が欠如していると思います。お金を関連団体にばら蒔くのではなく、将来のビジネスのために環境整備に投資することも考えていただきたいと思います。

編集後記「締めの都々逸」

「金もなければ 余裕もないが それでも未来に投資する」

昔は日本政府や日本企業は長期的な視野に立った経営をしていると言われたものです。欧米は目先の利益を追いかけて長期的な投資もしないと。だから、欧米企業は日本企業に負けてしまうんだよ。これは日本企業がリードしていた時代の話です。

しかし、欧米企業も考えました。日本企業も自分たちと同じルールにすれば、日本の優位性はなくなるのではないか。それがグローバリズムだったと思います。

つまり、日本にとってグローバリズムとは劣化に向かうことでした。それをマスコミや専門家、高名な学者の皆様が「グローバルこそ目指すべき方向なのだ」というプロパガンダを展開したんですね。それにまんまと引っかかってしまったというわけです。

でも、気がついたのなら反省して、これからの行動を修正すればいいと思います。変化を恐れず、チャンスだと思うことです。イエーイ!(坂口昌章)

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