「東京コレクション」が、あのパリコレのようにはなれない根本原因

Tailor's textile mannequin in clothes designer show room
 

3.シン・トウキョウコレクションの意義

シン・ゴジラでは、これまでのゴジラの恐怖や、怪獣への攻撃ではなく、ゴジラ出現に対応する政府の会議が主要なテーマとして描かれました。これは全く新しい視点であり、シンと名付けるのに相応しいと思います。

唐突ですが、東京コレクションの話です。高田賢三がパリでデビューし、大人気を博したことが刺激となり、高田賢三の同級生デザイナー達が中心となってTD6(トップデザイナー6)を立ち上げました。それが発展して東京ファッションデザイナー協議会(CFD)となり、東京コレクションがスタートしました。

当初から東京コレクションの課題となっていたのが、パリコレに参加するデザイナーが東京コレクションに参加しないこと、あるいは積極的に協力してもらえないことでした。しかし、これは当然の話です。世界一のパリコレに参加しているデザイナーが東京コレクションに参加してもその意義が見いだせないからです。

第一に、東京コレクションには、コレクションに対する質の高い批評が存在しないこと。つまり、世界のファッションプレスに対する影響力がないこと。

第二に、世界の主要な有名小売店のバイヤーが集まらないこと。日本のデザイナーの多くは、自前で会社を持ち、直営店を中心に展開しています。小売店に卸すことに積極的ではないのです。

東京コレクションに参加する若手のデザイナーも「いつかはパリコレ」と考えています。東京コレクションで評価されても、それで何かが変わるわけではありません。しかし、パリコレで評価されれば、ビジネスも広がり、デザイナー個人の名誉となり社会的ステータスも上がります。

パリコレがメジャーで東京はマイナー。ニューヨークやミラノ、ロンドンもあるので、マイナーの中でもかなり下の位置かもしれません。

私は東京は西欧中心の序列から脱するべきではないかと考えています。極論すれば、洋服以外の服のコレクション。民族衣装から発展した現代のコレクションです。

これをシン・トウキョウコレクションとして再構築できないでしょうか。文化の多様性を重視し、少数民族の独自文化を育成するというコンセプトならば、トウキョウで開催する意味があるのではないでしょうか。とりあえず、「シン・トウキョウコレクション」というタイトルだけでも置いておき、時間をかけて議論することを提案したいと思います。

この記事の著者・坂口昌章さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「東京コレクション」が、あのパリコレのようにはなれない根本原因
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け