世界はウクライナを見捨てはじめた。隠せない「綻び」と支援疲れの現実

 

このような多種多様な統治形態と思想を持つ国々が署名して参加できるようなルール作りとそれに基づく新国際秩序づくりは大きな混乱が予想されますし、激論が交わされることは容易に予想され、その道のりは難航が予見できますが、これまでのルールが踏みにじられ、秩序が崩壊する状況に直面する今、早急に議論・協議を始める必要があるという認識では、多くの国々が一致しています。

具体的な参加国についてはあまり触れないようにしますが、個人的に嬉しいニュースとしては珍しく日本がそこにスタートから参加し、かつ主導的な役割を果たそうとしているということでしょう。

私的には、これはこれまで携わってきた紛争調停グループの拡大版と位置付けており、多くのメンバーも参加していますが、今、議論を急ぐ中、結論を急ぐのは、「誰(どの機関)が音頭を取るのか?」そして「どこで行うのか?」、さらには「いつまでにそれなりの方向性を示すのか」という要素です。

国際社会における主体・アクターが、旧来からの国家・政府はもちろん、市民セクターなど非政府組織にも広がってきていることを踏まえると、どこかの国が主導するのは難しいかと思いますが、数か国で(またはマルチセクターの代表たちで)まとめ役を務めるのは可能かと思います。

その場合、私個人としてはUN(国連)が話し合いの場を提供すべきではないかと考えています。

今回のウクライナ問題への対応のまずさから、すでに権威も存在意義も失墜していますが、場の提供には適していると思われます。

私はグティエレス事務総長を個人的に敬愛していますが、ロシアによるウクライナ侵攻の際には遅きに失した対応しかできず、その影響力と威光は地に落ちました。昨年には再任され、あと5年の任期を与えられましたが、個人的には再任に臨むべきではなかったのと考えています。それはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、国連が場を提供する際、大事なのは、国連事務総長をはじめとするUNオフィシャルが決して前面に出ないことです。

各国や非政府系のアクターの意見集約に奔走し、整理し、議論を進める手助けをするという裏方に徹することが出来るかがカギです。

安保理や総会という常設の古い枠組みではなく、あくまでもアドホックな場・箱(特別委員会やタスクフォースなども一案)を用意して、できるだけフラットな環境での議論が必要だと考えます。

もし、このような試みを通して、大枠でも新しい国際ルールの形を示し、それに基づく国際新秩序のイメージを作り上げることが出来れば、恐らくそのタイミングでロシアとウクライナの戦争に対する調停および和平協議が実施できる素地が整うのではないかと感じています。

もうすでに見えてしまったように、従来の国際ルールは崩壊し、国際秩序も崩壊したため、旧来の考えに基づいた紛争の解決は、世界を二分・三分することになったロシアとウクライナの戦争に対しては不向きです。

大国間の代理戦争の様相を示す地域戦争も、内戦も、そして、世界を終焉させかねない大国間の直接対決も、この際古い国際秩序の悪しき例として葬り去り、代わりに国々がそれぞれの違いを超えて協力し、遵守していく新ルールと秩序が今、必要になってきているのではないでしょうか?

ここ数週間ほどですが、この世界的な取り組みに関わることが出来て、とても光栄ですし、非常に刺激を受けていますが、その裏側で日々多くの犠牲が生まれ、罪なき一般市民の安寧が奪われているという悲しい現実に衝撃を受け、一日も早い解決を手助けしたいと考えています。

まとまりのない内容になってしまったかもしれませんが、お許しくださいませ。

以上、国際情勢の裏側でした。

この記事の著者・島田久仁彦さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Володимир Зеленський - Home | Facebook

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

有料メルマガ好評配信中

    

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』 』

【著者】 島田久仁彦(国際交渉人) 【月額】 ¥880/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 世界はウクライナを見捨てはじめた。隠せない「綻び」と支援疲れの現実
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け