世界はウクライナを見捨てはじめた。隠せない「綻び」と支援疲れの現実

 

そしてイラン絡みの緊張は今、広域アジア地域に新しい戦争の火種を作っているように見えます。

以前から懸念されている核開発問題にかかる分断はもちろんですが、ウクライナでの戦争の裏で、イスラエルとイランの間の緊張がこれまでになく高まっているようです。

未確認情報ではありますが、今週、イランの複数都市の軍事施設がミサイル攻撃を受けたと伝えられましたが、規模と精度から見て恐らくイスラエル軍による攻撃と思われるようです。イスラエル政府は肯定も否定もしていないようですが、イランは確実にイスラエルへの報復攻撃を準備しているようで、そうなった場合は報復攻撃の応酬に繋がり、その戦争が一気にアラビア半島全体に飛び火することになりそうです。

このようなシナリオが実現してしまった場合、国際社会はウクライナ・ロシアと広域アジア両面で起こる戦争に対応しなくてはならず、ここに噂の台湾情勢が絡んでしまった暁には、冗談ではなく世界第3次大戦に繋がりかねません。

イラクやアフガニスタンでの大失敗を経験するまでは、旧ソ連崩壊後、唯一の超大国として世界中の治安維持に直接乗り出していたアメリカが出てくる状況だったのですが、すでに間接的にではありますが、ロシアとウクライナの戦争にどっぷりとコミットしていると同時に、アメリカ軍の直接介入を嫌う国民感情に押されて、アメリカが助けてくれる時代は終わってしまいました。

今回のウクライナでの戦争に対しても、武器弾薬の供与は行っても、アメリカ軍を派遣することはなく、NATOという枠組みの下、欧州の戦争は欧州が対応すべきと考えて動いているのと同じく、その他の地域でのいざこざも、その地域で解決すべきという姿勢に変わってしまっています。

結果、当事国が自ら解決するという枠組みが出来上がり、それが各地で起こる戦争の火種になっていると思われます。

私も参加している調停グループでも、多くの案件が持ち込まれますが、実際に調停トラックを走らせるためには当事者全員の同意が必要で、なかなか調停の実施には至りません。

国際社会の分断そして国際秩序の崩壊はすでにロシアによるウクライナ侵攻前から進行していたと思いますが、これまでの相互承認による国際ルールが踏みにじられ、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、欧米諸国とその仲間たちが実施した対ロ制裁の実施は、確実に世界の分断を決定的にしてしまいました。

しかし、国際社会の関心がロシアによるウクライナ侵攻に集まり、結果、他の火種に手が回らなくなっているという恐ろしい現状を前に各国も呆然としているだけではありません。

ウクライナでの戦争が長期化の様相を呈する中、新しい国際ルールとそれに基づく新国際秩序づくりの動きがスタートし、広がってきています。

どのような要素が加えられるのかはまだ方向性が見えませんが、一つ確実に見えてきていることは、これまでのような欧米型民主主義の押し付けは、世界の大多数の国々と地域の支持・参加を生むことは難しいということです。

アジアには一党独裁の国もあれば、王政の国もあります。同じアジアでも中東に目を向けると王族による支配と宗教思想をベースにした統治形態も存在します。アフリカでは、比較的民主主義的な統治形態は広がっていると思われますが、部族・民族ベースの統治形態もまだ根強く存在します。そしてラテンアメリカでは、ポピュリズムもあれば、左派もありますし、社会主義的な統治も存在し、必ずしも欧米型の民主主義を受け入れてはいません。

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