世界はウクライナを見捨てはじめた。隠せない「綻び」と支援疲れの現実

 

戦争の長期化は確実に支援疲れを起こし、戦争への非当事者による関心の薄れが顕著になり、各国民の関心事は「自分の生活の改善」といった内政に向き始めることで、ウクライナを世界が見捨てざるを得ない状況を作ってしまうかもしれません。

それを引き留めるためにストルテンベルグ事務局長の発言のように欧米による支援の強化と維持が必要という内容が繰り返されるのでしょう。

しかし、今月24日には開戦から1年を迎えることになってしまう“ロシアによるウクライナへの侵攻”は、確実に国際秩序を変えてしまい、国際協調の下に成り立っていた世界は崩壊したと言えます。

それは「領土の不可侵」、「法の支配」、「航行の自由」、「自由貿易」、そして「恐怖からの自由」といった国際社会が長年にわたり相互に遵守し、尊重してきた国際ルールを踏みにじり、代わりに世界の分断と混乱を鮮明化し、相互不信を高めたと考えます。

シリアでの内戦は継続していますし、イエメンも泥沼の内戦状態です。これらの内戦に対する国際社会の関心は薄れ、調停努力も進んでいません。

さらにはミャンマー国軍によるクーデターで、民主化の試みが砕かれたと思われるミャンマーも、クーデターから2年経った今も、国軍はまだ人心を掌握できておらず、民主派グループの武装勢力(PDF)による反転攻勢に直面して、各地で戦闘が繰り返されて治安状態は悪化の一途を辿っています。

結果として国民には強いAnti国軍感情が生まれ、経済活動もままならない中、欧米諸国の企業が早々と撤退した中、我慢強く操業を続けてきた日系の企業もついに撤退を決断しなくてはならない事態になっています。

そしてミャンマー国軍にとって重要な後ろ盾だったロシアは今、ウクライナでの戦争に忙殺されており、ミャンマーへのコミットメントは大きく低下しています。中国については、“隣国”という地政学的な位置づけもあり、ミャンマーの安定は大事なマターではあるものの、その安定の担い手は誰でもよく、あまり国際社会からの風当たりを強くしたくない習近平指導部は、あまり露骨なコミットメントを控えるようになってきています。

結果として経済は低迷し、雇用も失われる中、ミャンマーは再び忘れられた国となってしまい、困窮を極めるという悲劇を生んでいます。

UNによる調停も不発ですし、ASEANからも見捨てられた感が強い中、ミャンマーは行き先を失っているように見えます。

こじつけかもしれませんが、ロシアによるウクライナ侵攻が生んだ国際分断の被害者と言えるかもしれません。

以前、このコーナーでも取り上げたエチオピアにおけるティグレイ紛争も、最近はあまり報じられなくなったので解決したのかと思われがちですが、実際にはまだ継続しており、首都アジスアベバはかろうじて平静を保っていると言われていますが、多民族・多宗教国家でもある性格上、ティグレイ紛争を機に、国内のintegrityにほころびが出てきています。

ロシアによるウクライナ侵攻が起きるまでは、国連安全保障理事会でも特別会合を開いて取り上げるほどの注目度でしたが、その国連安保理が真っ二つに割れて機能不全を起こしている今、エチオピアで起きている悲劇と、その影響が飛び火して不安定化してくる東アフリカの懸念にコミットする余裕がなくなっています。

そして北東アジアでは北朝鮮による威嚇がエスカレーション傾向にあり、核の脅威は高まっていると思われますが、こちらについても今、口頭での非難や懸念の表明はあっても、実質的な措置を取るための基盤が存在しない状況になっています。つまり北朝鮮のやりたい放題になりかねない事態です。

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