ようやく気づいたか自民党。遅きに失した「子ども手当」復活の流れ

art20230209
 

民主党政権時の「子ども手当」を、まさに挙党態勢で潰しにかかった自民党。しかしここに来て、ようやく自らの過ちに気づいたが如き動きを見せ始めています。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、自民党が「宗旨替え」とも言える児童手当の所得制限撤廃の方向に舵を切った理由を考察。さらに自公と財務省による「妨害工作」に屈した当時の民主党政権に対しては、痛烈極まりない批判を記ぶつけています。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月無料で読む

かつてバラマキと批判した民主党政権「子ども手当」を復活?自民は少子化対策の理念を大転換できるのか

変われば変わるものだ。かつてバラマキだと批判した民主党政権の「子ども手当」を復活させるかのごとく、自民党が児童手当の「所得制限」を撤廃する方向に舵を切りはじめた。

2022年の出生数は統計開始以来初めて80万人を割り込み、想定より8年も早いペースで人口減少が進んでいる。このままでは国の衰退は目に見えている。少子化対策を迫られた自民党はついに“宗旨替え”を決断したということだろうか。

1月25日の衆議院本会議。代表質問に立った自民党の茂木敏充幹事長は「すべての子供の育ちを支えるという観点から、所得制限を撤廃するべきと考えます」と述べた。

「すべての子供の育ちを国が支える」というのは、これまでの自民党の主張を大きく転換するものだ。自民党には「子どもはそれぞれの家庭で育てるのが当たり前」という考えが根強い。

だからこそ、民主党政権で2010年3月に設けられた子ども手当に所得制限がなかったのを「バラマキだ」「自助の考えが欠如している」と激しく批判したのだろう。

参議院厚生労働委員会でその法案が採決されるさい、丸川珠代議員が「愚か者めが。このくだらん選択をした馬鹿者どもを絶対に忘れん」と罵ったことが昨今、話題になっているが、なにも丸川氏だけでなく野党当時の自民党はこぞって“批判のための批判”を繰り広げていた。

党の広報本部長だった小池百合子氏(現東京都知事)がその年の夏の参院選に向け、PRグッズとして「この愚か者めがTシャツ」をつくっても、「はしたないからやめろ」と声が出ることもなく、党広報戦略局長だった平井卓也氏にいたっては、丸川氏とともに報道カメラに向かってそのTシャツを広げて見せるパフォーマンスを演じたほどである。

岸田首相が年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と表明し、それに呼応するかのように、通常国会の代表質問で茂木幹事長が所得制限の撤廃を打ち出す。党内には安倍派を中心として所得制限にこだわる議員が少なくない中、あえて幹事長が軌道を大きく変更する姿勢を示したのは何を意味するのか。統一地方選を前にして国民の気を引きたいのか、本気で考えを改めるのか、それとも他に理由があるのかは、現時点ではわからない。

しかし13年の時を経て、ようやく自民党が、民主党政権の目玉であった「子ども手当」の意味を理解し始めたと、捉えることができるのではないだろうか。それは、茂木幹事長が所得制限撤廃を唱える理由として、少子化対策に成功しているフランスの「シラク3原則」を持ち出したことにも表れている。

「シラク3原則」の根本には「育児は女性だけでも夫婦だけでもなく、社会全体で育てる認識の共有が必要」という考え方がある。社会が子どもを育てるのだから、所得によって支援に差をつけるべきではないということになる。

第2次世界大戦後のフランスでは、少子化による国力の低下がドイツの侵略を許してしまった。その反省から画期的な「N分N乗方式」などの子育て支援政策が進んだのだと、茂木幹事長は安全保障ともむすびつけて少子化対策を語った。

この記事の著者・新恭さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • ようやく気づいたか自民党。遅きに失した「子ども手当」復活の流れ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け