ようやく気づいたか自民党。遅きに失した「子ども手当」復活の流れ

 

その茂木氏も、2011年8月の衆院財務金融委員会では、民主党政権の子ども手当についてこう批判していた。

「子育ての支援策、財源がいくらでもあれば私もやることに反対じゃありませんけれど、これだけ厳しい財政状況のなかで見直しは必要だと考えておりまして、我々はやはり、かなりなレベルの所得制限が必要だと思っております。従来の児童手当に戻すと、国庫負担は1.6兆円減額ができるわけであります」

国庫負担を減らすためにも所得制限が必要だと主張していたのである。それを撤回する茂木幹事長の提案について、岸田文雄首相は今のところ「一つの意見だと認識している」と述べるにとどめている。

だが、茂木氏が事前に官邸と打ち合わせをしたうえで発言したことは間違いなく、所得制限の撤廃は既定路線と考えるのが自然だ。

丸川議員の「愚か者」発言について問われた岸田首相はこう答えている。

「その議論を行う際の態度、発言等において節度を越えていたのではないか。こういったご指摘については謙虚に受け止め反省すべきものは反省しなければならないと思います」。

もし、所得制限の撤廃をする気がないのなら、「反省」という言葉は出てこないに違いない。当の丸川議員も政権中枢の意向を察知し、渋々ながら「反省すべきは、しっかり反省したいと思います」と記者団に語っている。

過去の過ちはさておき、自民党がしかるべき考えに改めることは良いことである。しかし、何をいまさらという感も否めないほど、度を過ぎた批判が横行していたのも確かだ。安倍晋三氏は雑誌「WiLL」2010年7月号掲載の座談会で、こう語っていた。

「子ども手当で民主党がめざしているのは子育てを家庭から奪い取る、子育ての国家化、社会化です」「これは実際にポルポトやスターリンが行おうとしたことです」

今年2月1日の衆院予算委員会で、立憲民主党の西村智奈美代表代行が指摘したところでは、統一教会関連の団体「世界平和連合」の機関誌である「世界思想」2010年3月号には次のようなことが書かれた記事があるという。

「子ども手当は親子を切り裂く。子育てを社会全体に還元することによって家族の自助努力を奪って依存体質を植え付け、子ども自身にも親に育ててもらったという感謝の念を失わせてゆく。そして所得制限も設けず現金給付するのは社会保障の理念から逸脱しており社会主義思想というほかない」

まさか、自民党の「所得制限」へのこだわりが統一教会の影響とはいわないが、安倍氏の発言と「世界思想」の記事内容が極めて似通っているのは否定しようがない。

そもそも民主党政権の子ども手当は「15歳(中学校修了)までのすべての子を対象として、月額2万6,000円を支給する」というものだった。

自民党政権時代の「児童手当」では所得制限があったが、民主党政権はこれをとりやめ、「親の収入にかかわらず、すべての子どもに手当を支給する。その代わり、高所得者からは税金などほかの方法で取り戻す」として、子ども手当を創設した。つまり「子どもは社会全体で育てる」という考えに立っている。

当然、「児童手当」を否定された自民党は反発する。その点で、子育て予算を増やしたくない財務省との利害は一致していた。

予算編成の経験が浅い民主党政権は、財務省を頼りにせざるを得ない。月額2万6,000円の財源がないという財務省の説明を受け入れ、とりあえず1万3,000円支給でスタートしたが、それさえ当時の自民党は許さなかった。

2011年7月の国会。自民党は公明党と謀って、このバラマキをやめないかぎり赤字国債発行法案の成立に協力しないと言い出したのだ。

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