先進国で自給率最低。ニッポンの食料安保を脆弱にした主犯は経産省か農水省か?

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世界最大の食料輸入国であり、カロリーベースの自給率が38%と先進国最低水準の日本。当然ながら国としての食料安全保障は脆弱と言わざるを得ない状況となっています。何がこの惨状を招いたのでしょうか。今回のメルマガ『国家権力&メディア一刀両断』では著者で元全国紙社会部記者の新 恭さんが、二人の専門家の言を引きつつその原因を分析。さらにここまで日本の食料安保を危ういものにした「主犯」のあぶり出しを試みています。

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高い飢餓リスク。世界で最も食料安全保障が脆弱な国家ニッポン

2月6日の衆議院予算委員会で、立憲民主党の野間健議員は岸田首相の施政方針演説について、このように指摘した。

「岸田総理が施政方針演説で農業に言及した箇所は、1万1,494字のうち121文字しかなく、過去20年間の施政方針演説で最も少ない」

輸入肥料や飼料の高騰などで農家・酪農家が悲鳴をあげているというのに、岸田総理は農業に関心がないのではないか、というのが野間議員の疑念であろう。

カロリーベースの食料自給率が38%にすぎず、食べ物はおろか種や肥料、牛や豚のエサさえも他国からの輸入に依存するこの国で、アベノミクスの末路ともいえる円安が進み、高値で爆買いする中国に買い負ける傾向が強くなっている。

ただでさえ、世界はしばしば異常気象に見舞われているうえ、新型コロナウイルスの蔓延もあって、食料の生産、流通が打撃を受けている。そこに、世界の小麦輸出の30%を占めるロシアとウクライナの戦争が起こり、穀物相場を押し上げたため、他の食料生産国に輸出を渋る動きが出始めた。まさに、世界で食料の争奪戦が起きているのだ。

岸田首相は巨額の防衛費を用意して米国から兵器を輸入する安全保障政策には熱心だが、人間の生命の源である食料をどんな国際状況においても確保する防衛手段の構築については、ほとんど何のビジョンもないように見える。

施政方針演説では「肥料・飼料・主要穀物の国産化推進など、食料安全保障の強化を図りつつ…」とほんの一瞬、この問題に言及はしたものの、具体的方策は示されず、熱量は全く感じられなかった。

能天気な岸田首相の姿勢とは裏腹に、日本の食料安全保障の現況は、かなり危ういようである。二人の専門家の意見を聞こう。

元農水官僚ながら現在は経産省所管の独立行政法人「経済産業研究所」の上席研究員をつとめる山下一仁氏は、ウクライナ侵攻や中国の爆食などで、国際的な食料品価格が上昇しても、所得が高い日本では、買えなくなって食料危機が起こることはないと指摘する。ただし、台湾有事が起きたときは別だといい、その深刻度について、こう述べる。

「台湾有事などで日本周辺のシーレーンが破壊されると、小麦も牛肉も輸入できない。輸入穀物に依存する畜産も壊滅する。この時は、国内にある食料しか食べられないので、ほとんど米とイモだけの終戦時の生活に戻るしかない。しかし、終戦時の1人1日当たり米配給量(成人で2合3勺、年間126キロ)を今の国民に供給するだけで1,400万トン以上必要なのに、農林水産省が示した今年の米生産上限値は675万トンである。これでは半分以上の国民が餓死する」(経済産業研究所のサイトより、以下同じ)

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